sit in the sun | ナノ

14-5


「っはぁ、はぁっ・・・」

なんだかジローを起こすのも悪い気がして、私は結局ジローと話す事無くあの場を走り去った。




いや、違う。




私はジローから逃げて来たんだ。
目を覚ましたときのジローの反応が怖くて。
また、拒否されてしまうんじゃないかって。

弱いなぁ・・・。

昨日、ジローと話すって決めたのに。
たとえジローにどんな事を言われても、受け止めるって決めたのに。




私は、側にいたいって。
ジローに触れていたいって。










『ーーー触んな!お前のせいでっ・・・』










もう、理由が分からないで拒否されるのは嫌だって。そう思ったのに。
それなのに結局、寝ているジローに一方的に話す事しか出来なかった。
・・・あぁ、昨日あんなに泣いたのに。まだ涙出てくるや。こんなに水分出して、私乾涸びやしないだろうか。
そんな事を考え軽く笑いながら、また酷い顔になってるだろうからみんなに会わないようにコートを通って裏口から部屋に戻ろう。そう思っていたのに。

「おい、どうしたんだお前。」
「あ、跡部・・・!」

運悪く跡部に見つかった。一番会いたくなかったのに。本当に運が悪い。
テニスの練習をしていたのだろうか。
跡部はうっすら汗をかいていた。

「映、お前・・・。」
「何よ、用事がないなら離してよ。」

顔を見られないように、後ろを向いた。
私今、絶対ぐちゃぐちゃだ。
顔も頭の中も。全部、全部。




「!?」




不意に腕を強く引かれた。
私はそれに思わずよろめき、跡部に倒れ込む形になった。

「離し、てよ・・・」
「・・・。」
「離してよ、跡部・・・!」
「んな顔してるやつを離せるわけねぇだろ!」
「何、で・・・何で!どうして・・・」

私はそのまま崩れ落ちた。


どうしてこんな事をするのか。


どうしてこんな事になったのか。




どうして跡部がそんな顔をするのか。




何も分からず、私は無言で抱きしめる跡部の胸をただただ叩き続けた。







簡単なのに
伝えたい言葉は、たった一言なのに




(20080829/20100601修正)

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