sit in the sun | ナノ
14-4
越前君に外にいたと言われただけで、場所まで分かったわけではない。だけど私は走り出していた。
なんとなく、ジローのいる場所が分かる気がした。
ジローなら、きっと太陽の下にいる。
そう、なんの確信も無いけど思った。
「・・・ジロー、」
遠くにチラリと金色の髪が見えた。
やっぱり思った通りだ。
綺麗な芝生の上に、ジローは寝ていた。
「ジロー。」
側に近寄り、そっと囁く。
まだ私のいる場所からジローの顔は見えない。
「寝てる、の・・・?」
何も返事が無い。聞こえるのは、規則正しい寝息だけ。
私はそのままゆっくりとジローのすぐ横に座った。
「やっぱりジローは、日当り良いとこ探すの上手だなぁ・・・。」
ぽつり、独り言を呟く。
横を見ると、ジローの金色の髪の毛がキラキラと光っていた。
「・・・なんかこうやって2人っきりって、久しぶりだね。最近ずっと部活で忙しかったし。」
氷帝の勉強は大変で、授業をサボる時間はなかったし、お昼も最近はレギュラーのみんなと屋上で食べていたしね。
そんな事を誰が聞いてるわけでもないのにペラペラと喋り続ける。
でも実際に思い返してみると、ジローと2人で前みたいにあのベンチでひなたぼっこする機会はほとんど無くなっていた。
ゆっくりと、ジローと話す時間が。
「ジロー良く私に膝枕ねだるけど、あれって足しびれたりして結構大変だったんだよ?だけどジロー、そんなのお構い無しに気持ち良さそうに寝ちゃうし・・・。」
私、何を言ってるんだろう。
こんな話をするつもりで来たんじゃないのに。
昨日の事を、話さなきゃ。どうして避けられてるのか、ちゃんと聞いて受け止めなきゃ。
そう頭では考えていても、実際に浮かんでくるのは一緒にひなたぼっこをしていた時の事ばかりで。
「一緒に授業サボってひなたぼっこしてたと思ったら、ジローってばいきなり膝枕って言ってさー。」
私がえーって渋ってても、結局いつだってとびっきりの笑顔で映大好きーって言いながら寝ちゃうんだ。
そして私もいつもそれに反論出来なくて。
ジローの幸せそうな寝顔みたら私も嬉しくなって、結局一緒に寝ちゃうんだよね。
それでまた足が痺れて、怒って・・・。
ポタリ
「あれ・・・?」
膝の上に、滴が落ちてきた。
「やだな、どうしたんだろう私。」
慌てて頬を触ると、いつの間にか涙が出ていた。
「ジロー・・・。」
横を見ると、太陽に照らされながら眠るジロー。
手を伸ばせばすぐ届く距離。
なのに、すごく遠く感じる。
「ジロー・・・、」
寝ているジローの髪の毛に、そっと触れる。
ふわりとしたその感触が、手に伝わる。
温かい、いつもと変わらない太陽の色をしたジローの髪の毛。
「私、嫌だ。やっぱりこのままジローに嫌われるの、嫌だよ・・・」
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