sit in the sun | ナノ

13-6


あれから、どれぐらい経っただろうか。
それ以上何も言わなくなった私に、不二君はずっと付き合ってくれた。
何を言うわけでもなく、ただ、優しく私の隣に座ってくれた。

「ごめんね、不二君。」

乱暴に目を拭い、私は不二君の方を振り向いた。
不二君は優しく笑ってくれていた。

「僕の事は気にしないで。それより・・・」

スッと手が伸びてきて、私の頬に触れた。

「目が、腫れちゃったね。ちゃんと冷やさないと。」

そう言って、指で私の目の下をそっと撫でる不二君。
あまりに自然に触れられたけど、よく考えたらその行為がすごく恥ずかしく感じてきて。

「ちょ、ちょっと不二君!?」
「ふふ、顔が赤くなってる。」
「!!」

パッと、不二君から離れた。

「・・・不二君、遊んでるでしょ。」
「映ちゃんが可愛くて、ついね。」

なんでこの人は、そいういうことをサラッと言うのだろう。

「ほら、またからかって・・・。」
「本当のことなんだけどな。」
「あーもう!部屋、部屋戻ろう!」

いてもたってもいられなくなって、私はベンチを立ち上がった。
良かった、と呟く声が聞こえた。

「・・・ありがとう、不二君。」

部屋へ戻る途中、小さく言った。
するとどういたしまして、と言ってまた頭を撫でられた。
その手はやっぱり温かかった。

「私、ちゃんとジローと話してみる。」
「そっか。」

部屋の前まで着いたとき、私は不二君に面と向かってそう言った。

「遅くまで付き合わせちゃってごめんね。おやすみ。」
「うん、おやすみ。」

ガチャリと扉を開け、カーディガンを脱いだ。
ゆっくりとベットに横になると、さっきとは違って眠気が襲ってきた。
泣きつかれたせいもあるが、不二君に話したおかげで気持ちも落ち着いている。
あ、目冷やさなきゃな。明日腫れちゃうかもしれないし・・・。
そう思ったのもつかの間、私はうとうとと眠りの世界へと落ちて行った。
ふと意識を手放す瞬間に、不二君の手の温かさを思い出した。
そしてまた夢の中で泣きそうになった。









触れられない
それが、こんなにも苦しいなんて




(20080826/20100601修正)

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