sit in the sun | ナノ

13-5


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眠れない。




どうしよう、全然眠れそうにない。




ベットに横になって・・・もう1時間ぐらい経っただろうか。
さっきから何回も寝返りをうっている。
が、寝付ける気配がない。


静かだな・・・。


さすが軽井沢。
東京の夜とは違って、何も音がしない。
聞こえるのは、時計の針の音だけ。
・・・駄目だ。全然眠れない。こうなったら気晴らしに散歩にでも行こうかな。
そう思って、カーディガンを羽織って私は外へと出て行った。
部屋を出ると、ひんやりとした空気が頬を撫でた。

「星が綺麗だな・・・。」

そっと呟いた言葉は、静かな夜空へ溶けていった。
東京では見れない3等星や4等星が、キラキラと瞬いていた。

「ほんと、綺麗だね。」
「ひゃっ!」
「ああ、ごめん。驚かせちゃったかな?」

横を見ると、そこには不二君がいた。

「どうしたの不二君?」
「なかなか寝付けなくて、散歩していたんだ。そうしたら映ちゃんを見つけたからさ。」
「そうだったんだ。実は私も少し寝付けなくて。」

そう言うと、不二君がふわりと笑った。

「一緒に良いかな?」
「もちろん。」

何を話すわけでもなく、私たちはゆっくりと歩き出した。

「少し座ろうか。」

どれくらい歩いただろうか。しばらくしてから不二君に言われ、小さく頷くと私たちはベンチに座った。

「それで、どうしたのかな?」

不意に、不二君が尋ねてきた。

「午後から何か様子がおかしかったから。何かあったの?」
「・・・私、おかしかった?」
「うん、少しね。僕で良かったら、話聞くよ?」

そう言って、私の手の上に手を乗せる不二君。

「私、ね。」

不二君の手が、温かい。

「ジローに嫌われちゃったみたいなんだ。」

ぽつりと呟くと、不二君が驚いた顔をした。

「最初は何で怒ってるのか、全然分からなくて。ただ、何かいつものジローと違うなって。」

いつもの明るくて、元気なジローがいなかった。
どこかずっとイライラして、近寄りがたいジローがそこにはいた。

「最初はね、何か嫌な事があったのかなって思ってたの。だけど、勘違いだったみたい。」

ジローに突き飛ばされた。
その時はただ、八つ当たりかなとか思っていた。
けれど、跡部と戻ってきた時にジローに触れようとした時のあれは違った。






あれは、拒否だ。






ジローの赤くなった頬にただ触れようとした。
それだけなのに、ジローはその手を避けた。
私の手を嫌がった。










『ーーー触んな!お前のせいでっ・・・』










「映ちゃん?」

不二君の手が、私の頬に触れた。
それで初めて私は自分が泣いているのに気がついた。

「ごめっ・・・!」

私は慌てて不二君から顔を背けた。

「謝らないで。それに、無理しなくて良いよ。」

不二君が、ぽんぽんと頭を撫でた。
その手が、とても温かくて。
止めようとした涙が、止めどなく流れてしまった。
さっきまでは全然涙が出る気配はこれっぽっちも無かったのに。




そうか、私はジローに嫌われそして拒否されてしまったのか。




口に出すと、それは酷く重く私にのしかかった。






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