sit in the sun | ナノ
13-3
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「おい、ジローお前!」
跡部の怒鳴り声でふと我に返ると、私は地面に座り込んでいた。
これって、どういう事?
「大丈夫、映ちゃん。」
「あ、うん。」
不二君に背中を支えられる。
あぁそうか、私ジローに突き飛ばされたのか・・・。
「ジロー!てめぇ何してんだよ!?」
跡部がジローの胸ぐらを掴み、怒鳴った。
「跡部、待って!」
慌てて声を上げる。
立ち上がって2人を止めに入ろうとした。
が、思うように体が言う事を聞かない。
「ちょっと跡部、落ち着きぃ。」
跡部とジローの間に、侑士が入った。
跡部がチッと舌打ちをして、乱暴に手を離した。
「映ちゃん、立てる?」
「うん、ありがとう。」
不二君の手を取り、私はゆっくりと立ち上がった。
「なになに〜?何かあったの〜?」
私たちの騒ぎを聞きつけたのか、青学や氷帝のみんながこっちに集まってきた。
これ以上騒ぎを大きくするのはまずいな。
「大丈夫、何でも無いよ!ちょっと私が転んじゃってさ。」
「なんだ、ドジっすね平塚先輩も。」
「う、うるさいよ桃城君。」
「で、いつまで平塚先輩の手握ってるんすか、不二先輩。」
そう言えば。
起こしてもらってから、ずっと不二君の手を握っていた。
「あ、ごめんね!」
「ふふふ、僕は全然良かったんだけどな。」
ガタンッ!
「ちょ、待ちジロー!!」
「え、ジロー!?」
声した方を向くと、ジローの後ろ姿が見えた。
慌てて私も後を追って行こうとした。
が、跡部に腕を掴まれた。
「お前はマネージャーの仕事をしろ。」
「え、でも・・・」
「忍足、手塚、後のことは任せた。ジローのとこは俺が行く。」
「了解や。」
「ああ、分かった。」
「待って、私も・・・!」
そう言ったとき、忍足が横から肩を掴んだ。
「映、跡部に任せとき。」
「で、でも・・・。」
「大丈夫やから。な?」
・・・分かった、と一言呟くと、おりこうさんと言って肩を掴んでいた手を離して頭を撫でられた。
「練習を再開するぞ。各自ペアを組んでストレッチから。」
「「「はいっ!」」」
手塚君の指示によって、練習が始まった。
私はみんなの飲み終わったボトルとタオルを回収して、マネージャーの仕事に戻った。
すごくもやもやした気持ちを引きずったまま。
そして20分ほど経った後だろうか。
跡部がジローを連れて帰ってきた。
ほっとした私は2人に駆け寄って行った。
「跡部、ジロー・・・。」
2人のもとに駆け寄ったのは良いが、何を言ったら良いかわからない。
「おい、ジロー。」
跡部がジローの背中を押す。
ジローが下を向いたまま、一歩前へ踏み出た。
「・・・ごめん、映。」
ぽつりと出た言葉に、私は驚いた。
「あ、うん、大丈夫。」
ふとジローの顔を見ると、ジローの右頬がほんのり赤くなっていた。
「ジロー、右頬・・・」
すっと手を伸ばしてジローの頬に触ろうとした。
すると、ビクッとジローが動いた。
!!
「・・・あ。・・・俺、練習戻るね。」
そう言い終わると、ジローはコートへと走って行った。
「・・・映?」
私は1人、動けないでいた。
跡部に呼びかけられても、何も答えられなかった。
持ち上げた左手がゆっくりと下へ落ちて行った。
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