sit in the sun | ナノ
12-6
私が座った席の通路を挟んだ反対側には、岳人とジローがいた。
そうだ、ジローだ!
何か足りないと思ったら、今日まだジローに会ってなかったんだ。
「おはようジロー!」
「おはよう〜。」
「ジローは遅刻しなかったんだね。偉い偉い!」
そう言えば侑士に映、何様やねん。と突っ込まれた。
「あはは、ごめんごめん。」
「遅刻したの映だけだぜ?」
「げ、マジか。」
「激ダサだな。」
「うううううるさい宍戸!」
「まあ向こうも遅刻してきたやついたしな。」
越前君のことだな。
彼は私と違って迷子だけどね!ぶふー!
「そう言えば映、お前菊丸と知り合いだったのか?」
岳人がさっそくお菓子の袋を開けながら聞いてきた。
「前に一回ストリートテニス場で会ったんだ。」
「ストリートテニスて、映テニス出来るん?」
「出来ますよー。昔テニススクール通ってたし。そんときは不二君と試合したんだ。」
「不二と試合!?」
「そ。」
岳人の開けたお菓子を食べつつ話す私たち。
あ、このお菓子おいしい。
今度買ってみよっと。
「なんや、映テニス出来るんや。ほな今度俺と試合しよう。」
「あー侑士抜け駆けずるいぞ!」
「まあまあ、今回合宿で自由時間あるんだし、その時みんなでやろうよ。」
「簡単に言うけど平塚、俺たちずっとテニス漬けにする気か?」
「え、良いじゃん。」
「俺も映先輩とテニスしてみたいです!」
「長太郎のあのサーブは嫌だなぁ。」
からかいながらそう言うと、真に受けたのかそんなぁと項垂れる長太郎。
「うそだって長太郎!試合しようね!」
「はいっ!」
ああ、長太郎にしっぽが見える・・・!
可愛いなーやっぱり長太郎はわん子みたいだなー。
「あ、でも先に英二君と試合しなきゃ。」
「菊丸と?」
「うん、この間約束したからさ。」
危ない、忘れるところだった。
この前不二君と試合した時、今度は英二君と試合するって約束したのに。
「へー。じゃあ、俺その次な!」
「岳人、抜け駆けはあかんで?」
あはは、といつものように明るい笑い声が響いた。
けれど、
「うるさい!!」
1人の声によって、シンと鳴り止んだ。
静まり返るバスの中。さっきまでの明るい雰囲気がまるで嘘のようで。
そんな中、1人に視線が集まった。
大声を出した本人。
芥川慈朗に。
「ご、ごめんジロー。」
ジローはその後何も言わず、ふいっと窓の外を向いてしまった。
「ジローが大声出すなんて珍しいな・・・。」
「眠かったんちゃう?」
「だけど、あんな怒らなくても良くね?」
「まあまあ宍戸先輩、そう言わずに。」
本当に、それだけだろうか?
「映、気分悪いん?」
「ああ、大丈夫なんでもないよ。」
その後ジローは一回もこっちを向くことは無かった。
理由は分からないけど
何かが崩れる音がした
(20080823/20100601修正)
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