sit in the sun | ナノ

12-3


―――――――――――――――


跡部の不愉快きわまりないモーニングコール(というか脅迫電話)によって目覚めた私は、それはそれはものすごいスピードで家を飛び出した。




ぐううう・・・。




畜生、腹が減った・・・。
もう走る元気も限界だ!


ブブブブブ


なんだよ、急いでるってのに!
こんな時に電話してくんな!

「もしもし!?」
『あと10分だぜ?』

こんのやろ・・・!
殴り倒したい。
今すぐ、殴り倒したい。

「急いで走ってますよ!」

私は跡部を殴り倒したい一心で全力で走った。
だからちょっと周りに不注意になってしまい、

「うわっ!」
「った・・・」

角を飛び出した所を、少年に思いっきりぶつかってしまった。

「ごめん、急いでて前見てなかった!」
「良いッスよ、別に。」

帽子をかぶった少年はどうやら無事だったようだ。
・・・て、あれ、私今跡部と話してなかったっけ?

「あ、あれ、携帯!?」
「これッスか?」

少年がそう言って、落ちていた携帯を渡してくれた。

「あ、ありがとう!あ、良かった通話切れてなかった。」
『おい、今の音なんだ!?てめぇちゃんと氷帝向かってんだろうな!?』
「ごめん、人にぶつかって携帯落とした。だから、頑張って走って向かってるって!」
『どうやらお前は人にぶつかる天才みたいだな、馬鹿映。』
「私に早く着いてもらいたいなら、電話かけてくんな跡部!馬鹿はお前だ!」


ブチッ


本当に、本当にムカつく・・・!
私だって、ぶつかりたくてぶつかってるわけじゃないやい!

「あんた、氷帝のマネージャー?」
「はい?」

隣にいた少年から、いきなり話しかけられた。

「うん、氷帝テニス部のマネージャーだけど・・・。君は何?」

あれ、誰って聞いた方が良かったか?

「青学の越前リョーマです。」
「あー、青学の人か!どうも初めまして、氷帝マネージャーの平塚映です。」
「あ、どうも。」

ぺこっとお辞儀をすると、越前君もぺこっとお辞儀をした。あら礼儀正しい。

「あんたが遅刻してるマネージャーだったんだ。」

グサリ前言撤回。

「君、何故それを・・・。」
「・・・ちょっと。」
「少年も寝坊か・・・。」
「俺は寝坊じゃないッスよ。」
「じゃあ、なんで遅刻してるの?」
「うっ・・・。」

越前君が、ふいっと横を向いてしまった。

「もしかして、氷帝に行く道が分からなかった?」

越前君の耳が、少し赤くなっていた。おや、これはもしかして・・・

「っ、ちょっと!」

深くかぶっていた帽子を奪うと、やはり彼の顔は赤くなっていた。
うわ、可愛い・・・。

「帽子、返して下さい。」
「あ、ごめんごめん。」
「・・・何笑ってるんですか?」
「可愛いなって思って。」

なんか、こういう後輩も可愛いな。
長太郎も可愛いけど、背がね、高いのだよ。

「携帯なってますよ。」

完全に不機嫌になってしまった越前君が、私の携帯を指差して言った。
あ、本当だ。

「もしもし?」
『映、あと7分だぜ?』




ギャーーーー!!




「越前君、走るぞ!あと7分だ!」
「え、あ、ちょっと!」

走れ、走るのだ少年!

「ちょ、道そっちじゃなくて左!」

ごめん、少年足速すぎ!
私追い抜いたらまた迷子になるでしょ!






- 68 -

[*前] | [次#] | [戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -