sit in the sun | ナノ
11-6
「40-15!」
驚いたな。
「40-30!」
少しは楽しめるかな、と思っていたが、予想以上だ。
細い身体に似合わず、重い球を打ってくる。
それに力任せなだけでなく、コントロールも抜群だ。
ベースラインギリギリの深いところに打ってきたと思ったら、ボレーで上手く前に落とす。
抜き出たテニスセンスと、執着心。
いや、彼女の場合は執着心よりも、テニスを心から楽しんでいる、という感じかな。
「ゲームセットアンドマッチ、ウォンバイ不二!6-2!」
「どあー!悔しいー!!」
大声で叫びながら、コートに倒れ込む彼女。
正直、ここまで僕も本気にさせられるとは思ってなかったな。
「すごく楽しかったよ。」
倒れている彼女に、そっと手を差し伸べる。
「私も、すごく楽しかった!ありがとう、不二周助君。」
そう言って、僕の手を握り返しながら起き上がった。
肩で息をしていながらも、キラキラと笑う彼女。
本当に、無邪気に楽しそうに笑うね。
・・・って、あれ?
「名前、フルネームで言ったかな?」
苗字はさっきから何回も英二が言ってたから分かったとして、名前まで言った覚えは無いけど・・・。
「ちょっと資料で見たことあって。最初は自信無かったんだけど、合ってて良かった。不二周助君と、菊丸英二君?」
そう言って、僕と英二を指差す彼女。
「すごいにゃ〜あってるにゃ〜!」
「資料で見たことがあるっていうと・・・?」
「あ、私氷帝学園男子テニス部のマネージャしてるの。平塚映です、よろしくね。」
「氷帝のマネージャーなんだ!よろしくね映ちゃん♪俺は英二で良いよん!」
映ちゃんの手を握り、ぶんぶんと振る英二。
「じゃあじゃあ、次俺と試合・・・」
「え、何!?聞こえない!!」
英二の言葉は、爆音のバイク音に消されていった。
なんだろ、暴走族かな?全く、迷惑だな。
「おい映!!」
「え、仁!?」
暴走族かと思ったバイクは、さっき映ちゃんを置いて帰って行った男だった。
「オラ、帰るぞ。」
「え、ちょっと待ってよ!?」
突然現れたと思ったら、突然命令した彼。
あまりに突然の出来事に、僕も英二も動けないでいた。
「ごめんね不二君、英二!また今度ね!」
そして嵐のように去って行ってしまった。
「・・・行っちゃったね、不二。」
「そうだね。」
2人の去って行った方向をぼーっと見つめる僕ら。
「でも、氷帝だったらまた近いうちに会えるね!」
嬉しそうに飛びついてきた英二。
「そうだね。今年のゴールデンウィークの合宿、氷帝と合同だったもんね。」
「次こそ、試合したいにゃ〜♪」
平塚映か。
あれだけの腕があるのに、なんで無名なんだろう・・・?
大会で見ていても不思議じゃないのにな。
まあ、なんにしても、楽しみがまた1つ増えたよ。
ストリートテニスはいかが?
こんな出会いがあるのなら、悪くないね
(20080810/20100601修正)
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