sit in the sun | ナノ
11-4
「どうやら先客がいたみたいだね。」
突然、後ろから聞こえた声にビックリして、私は一瞬動きが止まった。
しまった!
と思った時にはもう遅く、ボールは綺麗に横を抜けていった。
「あー!せっかく勝ってたのに!」
誰だよ!?いきなり声かけてきたの!おかげで集中切れちゃったじゃん!
そうイラッとしながら後ろを振り向くと、そこにはテニスラケットを背負った少年が2人立っていた。
「ごめん、気がそれちゃったかな?」
「ええ、おかげさまで。」
ため息をつきながらそう呟く。
テニスバックをしょっているところから、この人たちもテニスをしに来たのだろう。
だが、残念ながらコートを譲る気はない!
私だってまだまだテニスし足りないのだから。
「ごめんね、まだテニス終わる気ないからさ、今日は「おい映、俺抜けるぜ。」
「はあああぁ!?」
今日は諦めてね、と新たに現れた2人に言おうと思ったら、仁が戦線離脱宣言をした。
いきなり何言い出すんだこいつ!?
せっかく体もほぐれてきて、これからなのに!
ゲームだってちゃんとしてないのに!
よし、ここはもう一回モンブラン作戦で・・・。
「っておい!ちょっと仁!」
私がモンブラン作戦を決行しようとした時には、仁は既に自転車に乗って帰り始めていた。
おおおおいお前!
私の話を聞け!
てか何自転車で1人帰ろうとしてるの!?
私が帰れなくなるじゃないか!来るとき2人乗りだっただろ!?
「待てーーーー!!」
大声で仁の背中へ向けて叫んだ。
すると仁は後ろを振り返らず、右手だけをスッと上へ挙げた。
・・・なんか、かっこいいじゃん。
なんて、そんなのどうでも良いんじゃ!
「行っちゃったね彼。」
「可愛い女の子1人残して帰っちゃうなんて、酷いにゃ〜。」
呆然としていたら、後ろにいた彼らが話しかけてきた。
仁がいなくなった今、対戦相手がいない私は帰るしかないじゃないか。
試合、したかったのに・・・。
とぼとぼと帰る準備をしようと、私はコートから出ようとした。すると、片方の男の子が私の方を向き、こう言った。
「良かったら、僕と試合しないかい?」
「え?」
あまりに突然の申し出に、私は言葉も出なかった。
「もともと2人のゲームを邪魔しちゃったのは僕らだし。・・・嫌かな?」
「全然嫌じゃないです!え、本当に!?」
「もちろん。じゃあ英二、審判よろしくね。」
「え〜不二ばっかりずるいにゃ〜!俺も試合したい!」
「英二、順番ね?それじゃあよろしくね。」
「はい、よろしくお願いします!」
こうして、なんか良く分からないけど、出会ったばかりの人と試合することになった。
だけど、何か見たことあるんだよねこの人達・・・どこでだろ?
まあ、試合が出来ればなんでも良いや!
- 63 -
[*前] | [次#] | [戻る]