sit in the sun | ナノ
10-6
待っていた痛みが、いつまで待ってもこない。
「何をしているのあなた達?」
透き通った声が響き渡る。
「ぶ、部長・・・!」
上条さんの顔がみるみる青くなっていく。
振り上げられた手が、ゆっくりと下へ落ちていった。
「話し合いに来ないと思ったら、こんなところで何をしているんですか上条さん?」
「あ、あの、それは・・・。」
上条さんが震えている。
「男子テニス部のマネージャーに関しては、みんなで納得したでしょ?私たちも練習だけに集中できるようになったし、異論はなかったはずよ。」
目の前の女の子達が、何も言えずに固まってしまった。
てか、この声って・・・
「なっち!?」
後ろを振り返ると、そこにいたのは紛れも無くさっき教室で別れたなっちだった。
「映、呼び出しには行かないって言ったでしょ?」
「痛い痛い!痛いよなっち!」
耳を思いっきりひっぱるなっち。
止めてー痛いよ!
「てかなんでなっち!?」
「昼休みレギュラーの話し合いだったのに、上条が来なかったから他の子に居場所を吐かせたの。」
「ほぉ、なるほど!」
お昼休みの用事って、テニス部の話し合いだったのね。
「じゃなくて!なっちが部長!?」
「そうよ。なにか文句あるの?」
「全然!」
なら良いわ、と言ってなっちは私の横に立ち、上条さんたちを睨みつけた。
「言いたいことがあるなら直接私に言いなさい。映になにかあったら、私が許さないわ。」
決して大きな声で言ってないのに、なっちの声には迫力があった。
そしてそれを聞いた彼女達は、一目散に走ってどこかへ消えてしまった。
「ごめんね映。部長の私がしっかりしてなかったばっかりに・・・。」
今まで見たこと無い、なっちの顔。
嫌だ、そんな顔しないで。
「なんでなっちがあやまるの?そりゃ部長ってのには驚いたけどさ。」
そう言って私はにこっと笑った。
「ありがとう、映。」
「なっちこそ、守ってくれてありがとう。なっちに何かあったら、私が守るからね!」
すると、なっちが笑った。
私の好きな、いつもの笑顔で。
「もう、十分守られてるわ。」
私が守れるもの
気付いてないだろうけど、あなたのその笑顔が、私の何よりの救いなのよ
(20080802/20100601修正)
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