sit in the sun | ナノ

09-5


―――――――――――――――


新しくマネージャーが決まった。
その話を聞いた時、また跡部先輩の気まぐれかなにかで新しく入ったんだろう、と思っていた。
だけどマネージャーの仕事も最低限こなしていたから、誰も文句言わなかった。
俺もテニスさえ出来ればどうでも良かった。
親しくなる気もなかったし、関わる気もなかった。
それがどう言うわけか、跡部先輩の命令で家まで送っていくことになった。
特に会話も無く、そのまま送っていって終わりだろうなと思っていたら、平塚先輩から話しかけてきた。




「日吉君って2年生でレギュラーだよね、すごいね。」




正直、イラッとした。
今日来たばかりのあなたに、俺の何が分かるのか、と。
すごいね、の一言で済まそうとする。俺の何も知らないくせに。

「どうしてそう思うんですか?」

少し、困らせようとしたのだろうか。
後から考えれば大人げない質問だった。
テニスのことなんか分かってないんだろう、とか思ってそう平塚先輩に言った。
しかし、平塚先輩から出てきた言葉は俺の予想とは全然違った。
正直、驚いた。
すらすらと俺のプレイスタイルを話して言った。
たった1回部活に立ち会っただけでこんなに分かるものなのか・・・?
しかも、あんなにマネージャーの仕事をこなしていて、どこに観察する時間があったんだ?
そうこう考えてるうちに、家までたどり着いた。
帰ろうとしたところを止められ、数分待つと平塚先輩が何か手に袋を持って出てきた。

「これ、湿布。」

そう言って、持ってきた袋を渡された。

「湿布?何でですか?」
「日吉君、足首少し痛めてるでしょ。」
「!!」

どうして、この人はこんなに気がつくのだろう。

「歩いてるときなんか違和感があったから。ほんとは部活終わる前に気がつくべきだったのにごめんね。」

袋を受け取ると、そう平塚先輩が言った。

「先輩のせいじゃありません。俺が自分でこれぐらい平気だと思っただけです。じゃあ失礼します。」

そう言って後ろを振り向いたら、手を掴まれた。

「日吉君、今度からは自分の判断だけで決めないでね。」

真剣な表情でそう言う平塚先輩。
俺が分かりました、と言うと、フワッと笑って掴んでいた手を離した。

「今日はわざわざ送ってもらってごめんね。ありがとう。」
「いいえ、家もそう遠くなかったですし。また明日。」
「うん、明日ね。」

自分でも、顔がほころんでいるのが分かった。
親しくなる気も、関わる気もなかった。






ーーー前言撤回かもしれないな。






何かが変わっていく予感がした。









暗闇エスコート
そしてナイトは魔法にかかる




(20080729/20100601修正)

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