sit in the sun | ナノ

09-3


「おい、部室の鍵締めるから外出ろ。」

何をするわけでもなくぐだぐだと残っていた私たちだが、部誌を書き終わった跡部に言われ部室を出た。

「うわー外真っ暗だ。」
「おい、明日の朝練は8時だ。遅刻するなよ。」
「それは私も参加?」
「あーん?当たり前だろ。」

そうですか、当たり前ですか!

「映!一緒に帰ろ〜!」
「ごめんジロー、私駅と反対方向なんだ。」
「えー!じゃあじゃあ俺、映の家まで送って行くよ!」

そう言ってジローが私の手をとった。
か、可愛い・・・!

「嬉しいけど、ダメ。わざわざ遠回りだし、明日も朝から練習あるんだから。今日はまっすぐ家帰ってゆっくり休んで。」
「えー・・・。」

シュンッと落ち込むジロー。

「ごめんね、ありがとう。」

ジローのふわふわの髪の毛をぽんぽんと撫でると、分かった、と小さく聞こえた。

「けど、夜道を女の子1人は危ないで?」
「そんな心配しなくて大丈夫だって。」

私は軽い気持ちでそう答えた。
すると、侑士の顔が変わった。

「なにが大丈夫なん?自分女の子なんやで?」

あれ?
侑士が怒ってる・・・?

「ご、ごめん・・・。」




いつもと違うその表情が、ちょっと怖いと思った。




「おい日吉、お前確か駅と逆方向だったよな。」
「そうですよ。」
「じゃぁお前が映を送って行け。」

何を言い出すのかと思えば、いきなり跡部は日吉君にそう命令した。

「え!?ちょっとまってよ跡部!日吉君に悪いでしょ!」
「俺は良いですよ。」
「いや、でも、その・・・」
「映、日吉も断るん言うなら俺が送ってくで。」




また、侑士の視線が強くなった。




「でも侑士は俺と一緒で駅のほうだろ?」
「関係あらへん。」

ジッと送られてくる瞳が怖い。
何に怒らせちゃったんだろう?何がいけなかったんだろう?
・・・分からない。
でも、私が1人で帰ろうとした事に対して怒っているのは間違いなくて。

「・・・分かった。じゃあ、悪いんだけど送ってもらえる?日吉君。」

理由は分からないけど、このままじゃ帰るに帰れない。そう思って、取りあえず私から折れてみる事にした。

「分かりました。それじゃあ帰りましょうか。」
「あ、うん。」

決まったとたんに歩き出す日吉君。私はそれを追って行こうとした。
すると、侑士に腕を掴まれた。

「怒ってすまんな。でも、映が心配やったんやで?それは分かってな。」

そう言って私の腕を掴む侑士の手は、ほんの少し震えていた気がした。
そして、さっきの集団のこともあったし・・・そう小さく呟いていた。
あぁ、そうか。
私にとっては何でも無い事だったけど、侑士にはすごく心配かけてたんだな。

「ありがとう、侑士。」

申し訳なく思う一方で、心配されてたんだと思うと何だか嬉しくなって。
一言お礼を言うと、侑士はいつもの表情に戻って、そしてにこりと笑った。

「ええよ。ほら、日吉のとこ行き。」
「あ、うん。みんなまた明日ね!」

手を大きく振り上げながら、私は日吉君のところへ走って行った。






「ククッ、いつもはポーカーフェイスのお前がどうしたんだ?」
「・・・別に、何でもあらへんよ。」
「侑士〜!俺らも帰ろうぜ!」
「そない急ぐなや岳人。ほなな跡部。」
「あぁ、明日な。」




こうして、部活が終わった私たちはそれぞれ帰路についた。






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