sit in the sun | ナノ
05-3
「・・・!」
んー、なんだろ・・・。
「・・・映!映!!」
「は、はひ!」
なっちに名前を呼ばれ、私は目を覚ました。
せ、先生に睨まれてまーす!ぎゃー!
なっちの忠告を受けていたにもかかわらず、どうやら私は寝てしまっていたようだ。
しかも時計をみたらまだ9時前。
・・・始まって30分たたないで寝てしまったのか。
「平塚、早くしないか。」
そう先生に言われたが、早くしないか、の意味が全く分からない。
「やっと起きた・・・。黒板の問題、当てられてたの。・・・大丈夫?」
なっちが横からこそっと教えてくれた。
あ、なるほど、そういうことか。
ひとまず席を立ち黒板に向かう。
「この問題だ。授業聞いてたなら、もちろん解けるはずだろ。」
「はあ。」
黒板には、数式が書かれていた。あれ、これって・・・
「・・・この2次関数って、高校でやる数式じゃないんですか?」
そう、中学生がやる範囲じゃない。
「氷帝学園では中学生のうちから勉強するんだよ。・・・そうか、編入して来た君には難しかったかな?」
くいっとまた眼鏡をあげて言う先生。
その顔には、あざ笑うような表情が浮かべられていた。
(まだこれ、授業で習ってないよな?)
(また意地悪かよ、立ち悪ー)
どこからかそんな声が聞こえて来た。
ああ、そういうことですかい。
「出来ないようなら、席に戻って構わないよ。」
私に恥をかかせて満足したのか、先生はそう告げた。
「いいえ、ちょっと驚いただけです。大丈夫です。」
私はチョークを持ち、黒板に書かれた関数を解きはじめた。
カツカツ、と数字が書かれていく音が、教室に響き渡る。
「これで、満足ですか?」
残念でした、先生。
私、数学は得意なんですよ。数学だけは、ね。
あっさり解けてしまったことに呆然としていた先生だが、逆に自分が恥をかいたと理解すると、赤面しだした。
「なな、なんという言い方だね君は!?そんなにやる気が無いなら、授業に出ていなくて結構だよ!」
おいおい、逆切れかよ。
「じゃあ、出て行きまーす!」
そう明るく言って、私は本当に教室から出た。
だってちょうど眠かったし、先生から出て行って良いって言われたんだもん。これ、さぼりにならないよね?
「昨日のお昼寝場所にでも行こーっと!」
そう言って私は軽い気持ちで、本当に軽い気持ちで私は中庭へと向かった。
これからあんなことが起こるなんて思いもせずに。
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