sit in the sun | ナノ

29-7


「おい、」
「へ?」


突然耳元から聞こえてくる声に、私は自分の耳を疑った。
だって、この声は不二君じゃなくて・・・

「跡、部?」

そう、紛れも無く跡部の声だったから。

「ほんとに、跡部?」
「あん?それ以外に誰だってんだよ。」

そう言ってフンと鼻で笑う跡部。
間違いなく跡部本人だ。
でも・・・何で?
だってここは青学の部室で、跡部がいるはずが無いのに。
でも、確かに今私を受け止める形で抱きしめてくれてるのは、跡部以外の何者でもなくて。

「何で居るの!?」
「うるせぇ、耳元で喚くな!」
「って、お前も耳元で叫ぶなよ!うっさい!」
「アーン!?」
「あーん!!?」
「テメェ、真似してんじゃねぇ!」
「てか、いい加減離れろよお前ら。」

岳人の突っ込みに、バッと背中に回された腕を離す跡部と私。
違うんです!これは不可抗力だったんです!

「って、何で岳人達も居るの!?」

声の聞こえて来た方を振り返れば、部室の入り口には岳人の姿。そして岳人以外にも侑士と萩と長太郎と樺地が後ろにいた。
何で!?だってここ青学だよ?氷帝の部室じゃないよ!?

「ストリートテニス場で青学の1年に会ったんや。で、映がなんや良く分からんもの飲んで倒れて、まだ青学の部室に居るって聞いてな。」
「わざわざ迎えに来てやったんだぜ!感謝しろよな!」
「それで、先輩もう体調は大丈夫ですか?」
「あ、うん大丈夫だよ。」
「そっか、なら良かった。」
「ありがと、萩。」
「俺にも礼言えよ!」
「はいはいありがと岳人。」
「んだよそれ!」
「うるせぇぞお前ら!まあ、そう言う訳だ不二。映はもらっていくぜ。」
「はぁ?どういう訳よ。て、痛い痛い!」

なんだか良く分からないけど、急に私の腕を掴んで部室から出て行こうとする跡部。
痛いよ!そして訳が分からない!

「なんかごめんね不二君!今日はありがとう!今度御礼するからあああぁぁ・・・」




――――――――――――――――




「なんだか、凄かったなぁ。」

ひとりきりになった部室でぽつりと呟いた言葉は、他の誰にも聞かれる事無く静かに消えていった。
それにしても、面白かったなぁ。
映ちゃんの反応はもちろん、氷帝のみんなのあんな反応まで見れるなんて。

「本当に興味深い子だな、映ちゃんは。」

そう言っているうちから自然と笑みがこぼれてくる。
早くまた会って話をしたいな。
今日帰ったらメールしてみようかな。
でも、映ちゃんが今度してくれるっていう御礼を楽しみに待っていようかな。


我慢、出来るかなぁ・・・。


まぁ、遅くても関東大会でまた氷帝のみんなと映ちゃんの面白い光景が見られるから良いかな。
ふふ、楽しみだな。

「だけど、それよりも僕としては・・・」










次に会うときは
誰にも邪魔されない、ふたりきりが良いな。なんてね




(20090719/20100601修正)

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