sit in the sun | ナノ

03-4


「なんや自分、初めて見る顔やわ。」

じっと私の顔を見ていた彼の第一声は、こんなだった。おお、生大阪弁!

「私、今日から編入してきた平塚映。よろしくね。えっと・・・






しのびあし、君?」






そう言うと、彼は目を丸くして私を見つめ返した。
・・・あ、あれ?

「しのびあし、て、俺のこと?」
「う、うん。だって、ここに名前書いてあるじゃん?」

そう言って、背もたれの後ろの名前シールを指差してみる。確かにそこには『忍足』と書いてあった。

「あ、しのびあしじゃなくてにんそくだった!?」

慌ててそう尋ねると、彼はまた目を丸くして私の方を見た。
あ、あれ?






「あはははは!!!」
「!!!!」

口を開いた、と思ったらいきなり大声で笑われた。えー!!?

「す、すまんな、あまりにおもろくて・・・あかん、涙でてきた。」

目尻にうっすら涙を浮かべながら、未だに腹を抱えて笑う彼、しのびあし、またはにんそく君。
私はどうしたら良いか分からず、ずっと彼の笑いが収まるのを見ていた。てか、笑い過ぎだ!

「あー久しぶりにこんな笑ったわ。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「あんな、これしのびあしちゃうんよ。」
「えっ!そうなの!?じゃあやっぱりにんそく?」
「あははは!にんそくもちゃうねん。」
「な、なんと・・・!」

両方間違ってたよ!
はっずかしー!ああ穴に埋もれたい!

「おしたりって読むねん。」
「・・・おしたり?」
「そう、忍足。忍足侑士や、よろしゅうな平塚さん。」

しのびあし改めにんそく改め忍足君は、綺麗に笑うと右手を出してきた。

「こちらこそ、忍足、君!いや、ほんと読み方間違えてごめん。」
「ええよ、笑わしてもらったし。」

にぎり返した忍足君の手は、繊細そうな見た目とは違って結構がっしりとしていた。

「分からんことあったら、なんでも聞いてな。」
「ありがとう。」

気にせんでええよ、そういって忍足君は前に向き直った。






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