sit in the sun | ナノ

29-3


「それじゃあ、失礼致します。」

竜崎先生に無事に書類を渡し終わると、私は職員室を出た。
これも職員室まで送り届けてくれた乾君のおかげだ。感謝感謝。
けれど、かわりに私に頼みたい事って何だろう・・・。
気になるから教えてって言ったんだけど、用事が終わったら連絡してとだけ言って教えてくれなかったし。
何をさせられるんだろう。怖いなぁ。
・・・ま、考えても仕方が無い。
とりあえず乾君に連絡をしよう。そう思った時、


・・・あれ?


どこかで見た事のある人が、廊下を歩いていた。
えっと、確かあの人は・・・

「山吹の監督さん?」

そう言うと、私に気が付いたのかこちらを向き、おや君は・・・と返された。

「氷帝テニス部のマネージャーの平塚です。お久しぶりです。」
「あぁ、確か亜久津君の幼なじみでしたね。」

はい、あの時はありがとうございますと言うと、いえいえと優しく返された。

「どうして青学に来ているんですか?」
「あ、今日は竜崎先生に書類を届けに来たんです。監督はどうして?」
「奇遇ですね、私も同じく書類を届けに来たんですよ。」

そう言う山吹の監督の手には書類。
そしてそのひとつには、

「・・・亜久津仁?」

そう、確かに仁の名前が書いてあった。
なんで仁の名前が?と不思議に思っていると、あぁこれですか?と言って書類の方を見た。

「実はもう一度テニスに亜久津君を誘おうと思いまして。」
「仁を?」
「はい。あの可能性を潰してしまうのは惜しいですからね。」

それから一言二言言葉を交わしてから、それではまたと言って山吹の監督は職員室へと入っていった。


可能性、か・・・


ひとりぼんやり考えていたら、ポケットに入れていた携帯が震えだした。

「もしもし?」
『もう用事は終わったかい?』
「あ、乾君。うん、終わったよ。」
『じゃあそっちに迎えにいくよ。』
「え、わざわざ良いよ!そっち行くよ!テニスコートでしょ?」
『構わないが・・・平塚さんが迷ってテニスコートにたどり着けない可能性は97%だが?』
「すみません迎えに来て下さいジッとして待っています。」






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