sit in the sun | ナノ

28-5


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「忍足。」

水道場で顔を洗っていた彼に声をかけると、ん?佐藤か?と言って顔を上げた。
眼鏡かけてないの珍しいな、なんて思いながら、はいと言って私の持っていたタオルを渡す。
すると自分準備良いなぁ、と笑って受け取った。
と言うか、顔洗うならタオル用意しておきなさいよ。

「で、どないしたん?」

おおきにとタオルを返しながら、私に問いかける忍足。
あぁ、そうだ。私はわざわざ忍足にタオルを渡しに来たわけじゃなくて。

「映見てない?」

随分前から姿の見えなくなった映を探しに来たんだ。

「映?そう言えば見とらんなぁ・・・。教室戻ったりは?」
「私もそう思ったんだけど、居なかったのよ。」
「携帯は?」
「繋がってたらわざわざあなたのとこに来ないわよ。」

ため息を吐きながら言い放つと、厳しいなぁと返された。

「もう一回探してみるわ。邪魔したわね。」
「あ、俺も手伝うで。」
「あぁ、別に」

大丈夫よ。そう言おうとしたその声は、マジー!!?と言う大声でかき消された。
五月蝿いわね・・・私の声を遮るなんて良い度胸じゃない。何処の誰よ。

「え、それマジで!?」
「マジマジ!跡部様がコートで試合してるんだって!!」
「え、相手は?」
「それが、今年入ったマネージャー居るじゃん?あれだって。」
「なんでマネージャ?」
「あーもう、そんなことより早く見に行こうよ!」

そうだね、行こ行こ!という大声を残し、バタバタと彼女達は走り去っていった。




「「・・・。」」




無言になる私と忍足。
そしてお互いに顔を見合わせる。

「・・・今のって、」
「・・・はぁ。とりあえず私たちもテニスコート行きましょ。」

ほんま予想外の事ばかりしてくれるなぁと呆れたように呟きながらも、チラリと覗き見した彼の顔は笑っていた。
あぁでもほんと、映のすることは予想外の事ばかり。






「ふふ、後で散々私を探し回させたお詫びをさせなくちゃね。」
「・・・(ぞわっ!)」






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