sit in the sun | ナノ
28-3
「かっ飛ばせー!なっち!なっち!」
カキーン!
「しまっ・・・!」
宍戸のキャッチャーミットに入るはずだった球はなっちの振り切ったバットに当たり、見事にレフト方向へ。
さすがなっち!これはツーベース行けるかも!
「セーフ!」
予想通り、なっちはツーベースまで余裕でたどり着いた。
ワアッと私のクラスの活気が戻る。これで逆転のランナーが出た。
次の打者は、
「またえらいプレッシャーやなぁ。」
「侑士!」
そう、次の打者は侑士だった。
「頑張ってー忍足君ー!!」
一気に応援に熱が入るクラスメイト。
侑士はゆっくりとバッターボックスに入ると、宍戸となにか一言二言交わしていた。
そして打ってこーい!という私の大声に気付くと、こっちを向いて任しときと言ってフッと笑った。
その瞬間、キャー忍足君頑張ってー!という声援が響きわたった。
・・・敵チームからも聞こえたのは幻聴だろうか。
「ストラーイク!」
初球、見送った球はストライクゾーンぎりぎりに入りワンストライクをとられた。
2球目はピッチャーの子も緊張しているのか大きく外れてボールになり、3球目もまたボールになった。
頑張れ侑士・・・!
一瞬目を閉じて祈ったその瞬間、カキーンと言う音が聞こえた。
慌てて目を開けてボールを探すと、侑士の打ったボールは大きな放物線を描いてライトへと飛んでいった。
まずい、飛距離が足りない。
あのままじゃ、ライトに捕られちゃう・・・!
「・・・って、あれ?」
ボールの飛んでいく方に、人の姿が一向に見えない。
・・・何で?
状況が良く分からずチラリと宍戸の顔を見ると、サァッと青ざめていっていた。
そして、
「ジロー!!!!!!」
と大声で叫んだ。
「・・・成る程。」
宍戸の大声にもう一度誰もいないと思っていたライトを見ると、そこには確かに金髪が寝転がっていた。
・・・うん。芝生、気持ち良いもんね。
「ホームイン!」
そうこうしているうちに、なっちがホームに戻ってきた。
そして逆転ランナーである侑士も、3塁を蹴ってホームを狙って走ってきた。
だけどその間にジローのカバーをしたセンターが投げたボールがセカンドに渡り、ホームへ返ってくる。
侑士が早いか、ボールが早いか。
どっちだ・・・!?
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