sit in the sun | ナノ

27-6


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「おい、」
「・・・え?」

顔を上げると、目の前には腕を組んだ跡部が立っていた。

「いつまでボーッと座ってる気だ。表彰式行くぞ。」
「え?」

表彰式?
だって、表彰式は決勝戦が終わった後って・・・。

「もう、とっくに試合終わっただろ。」

そう言ってため息を吐く跡部。
パッと視線をコートに移すと、コートの中にはもう整備をしている人しか残っていなかった。

「ほら、行くぞ。」
「あ、うん。」

ぼうっとする体を無理矢理立たせると、そのまま表彰式の行われる会場まで歩いていった。
そうだ、決勝戦は終わったんだ。青学の優勝で。
仁が、越前君との試合に負けてーーー。

「それでは今大会結果、および関東大会出場の5校を発表します。」




・・・あれ?




山吹の列を見ると、仁の姿が無かった。
どうしてだろう・・・。

「太一君、仁は?」

選手と違って後ろで待機してるマネージャーの私は、隣に居た太一君にそっと聞いてみた。
すると太一君は、それが僕も見てなくて・・・。と言ってそわそわと辺りを見回していた。

「あぁ、檀君は聞いて無かったんですね。」
「え?」

後ろを振り向くと、そこには山吹の監督が立っていた。
そして・・・










「仁!」

大声で叫ぶと、仁はゆっくりとこちらを振り向いた。
そして私の姿を見ると、んだよと顔を歪めながら呟いた。

「テニス部、辞めたってほんと?」
「・・・どっから聞いたんだよ。」

山吹の監督から、と言うと、余計なこと喋りやがってと舌打ちをした。

「どうして、辞めたの?」
「もともと暇つぶしだったんだ、いつ辞めようが俺の勝手だろ。」
「そうだけど・・・。」


でもーーー


「亜久津先輩!」

ふと、後ろから大きな声が聞こえた。
ふたりして後ろを振り返ると、そこにはこっちに必死に走ってくる太一君の姿が。

「亜久津先輩っ!なんでテニスをやめちゃうんですか!?」

息を切らしながら、必死に叫ぶ太一君。
手を痛いほどギュッと握りしめる姿が、まるで必死に溢れるものを抑え込んでいるように見えた。

「先輩は背も高いし、骨格も大きいし、強くて堂々としてて・・・僕はひっくり返ったってなれないんです!」

だから、辞めないで下さい・・・!
俯きながら最後にもう一度叫んだ太一君の声は、ゆらゆらと空気を揺らして消えた。
太一君・・・。

「太一、」

仁が今まで閉じていた口をゆっくりと開いた。

「俺を目指しても、その先に可能性は無いぜ。」
「え・・・?」
「待ってるみたいだぜ、お前を。」

そう言って仁の指差すほうには、越前君の姿。
そしてそのままじゃあなとだけ言って、仁は去っていった。
たまらず、私も仁の後を追って走った。
後ろからは、僕も選手としてあのコートに立ちたいです!いえ、立つですっ!と太一君が大声で叫ぶのが聞こえた。

「・・・嬉しそうだね。」
「あ?」
「ううん、なんでもない。」

後ろを振り返ることなく黙々と歩く仁。
だけど、私には仁が笑ってるように見えた。






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