sit in the sun | ナノ
27-5
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俺はただ、苛立っていた。
つまらない日常に。
何のスリルも無い毎日に。
そして、
「只今、電話に出ることがーーー」
繋がらない電話に。
「・・・クソッ。」
スピーカーの向こうに無機質な声を確認すると、チッと舌打ちをしながらボタンを押した。
もう一度かけようと思い開いた映の番号。しかし俺はそれを押すのを止め携帯を制服のポケットへねじ込んだ。
前なら、こんな事は無かった。
アイツに電話が繋がらないなんてこと。
俺がふと思って電話をかければ、必ずアイツは出た。
それが放課後だろうが授業中だろうが、だ。
だが、この1ヵ月で変わった。
アイツが、氷帝に転校してから。
しかもただ電話が繋がらなくなっただけじゃない。アイツは家に帰る時間も遅くなった。
なんでも、ほぼ毎日練習のある部活に入ったから、だそうだ。
今までずっと帰宅部だったくせに、どういった心境の変化なのか。
しかも、そんな忙しい部活どうせすぐ弱音を吐いて辞めるだろうと思っていた俺の考えとは裏腹に、アイツは部活に打ち込んでいって。
この間のゴールデンウイークも、部活の合宿だと言って一切家に居なかった。
「面白くねぇ・・・。」
苛立ちながらふと前を見ると、テニスボールとラケットが散らばっていた。
テニス、か・・・。
昔スクールでやったきりだな。
・・・いや、この前映が急にテニスやりたいと言い出して軽く打ち合ったか。
「・・・。」
足下に転がっているラケットとボールを掴み取る。
「ーーーッ!」
試しに打ったサーブは、パァンと強い音を立ててコートへ入った。
やっぱり、つまらねぇ。こんな球遊び。
「いやーっ、すごいですね。すばらしい。」
ふと、ぱちぱちという手を打つ音ともに声が聞こえた。
誰だ、コイツは。
「どうですか・・・テニス部?」
「ゲーム3-2、山吹亜久津!」
ただの暇つぶしだった。
テニス部に入ったのも、試合に出たのも、全部。
「その程度か、小僧。」
「クッ・・・!」
どいつもこいつもこんな球遊びに熱くなりやがって。
こんなゲームのどこが楽しってんだよ。
つまらねぇ、つまらねぇよ。
あぁ、苛々する。
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