sit in the sun | ナノ

26-6


「・・・。」
「・・・。」

沈黙が痛い。
ものすごく空気が重い。

「み、見つかりませんねぇ。」
「そうだな。」


・・・チーン。


あぁもう、なんでそんなにピリピリしてんだよー。気まずいじゃんかよー!
くそう、宍戸と長太郎め・・・!

「その石は・・・」
「え?」
「そのピアスについてた蒼い石ってのは、よっぽど高い宝石なのか?」

跡部の質問にビックリして、思わず跡部を見た。
すると跡部も私を見てたのか、目が合った。

「宝石でも何でも無い、ただのガラス玉だけど・・・。」
「は?」
「ん?」

ぽかーんとこちらを見る跡部。
え、な、何?

「ガラス玉の為に、こんな必死になってんのかよ。」

はぁ、と盛大にため息を吐く跡部。
何、ガラス玉だといけないわけ?

「そりゃ、跡部にとったらただのガラス玉かもしれないけど、私にとっては・・・」




私にとっては、たったひとつの、大事な・・・




「私にとっては・・・なんだよ?」
「・・・なんでもない。」
「言えよ。」
「嫌だ。」
「言え。」
「嫌。」
「テメェ!」
「何よ!」
「映にとって、なぁに〜?」
「「ジ、ジロー!?」」

いつのまにか私と跡部の間にはジローがちょこんと座っていた。
そしてまたねぇ、探してる石って映にとって何なの〜と聞いてきた。

「幼馴染にね、もらったピアスなの。」
「おい、何でジローには素直に言うんだ。」
「ジローだからに決まってるでしょ。」
「こんの・・・!」
「幼馴染って、この間会場で会った?」
「そう、亜久津仁。」






それはまだ、私たちが幼いころ。
近所のお祭りに仁とふたりで行った時。

「射的ってあるじゃん?あれで、このピアス見つけて。なぜか分からないけど、すごく欲しくて。」

ピアスの穴なんて開いてないのに、何でか欲しくてたまらなくて。
持ってきたお小遣い、全部使っても取れなくて。
食べたかった綿飴も、たこ焼きも、カキ氷も全部食べられなくなって。

「で、どうしたんだ?」
「つまらなくなって帰った。」
「うわぁ、わがままだC〜。」
「だって、仁が見せびらかすように焼きそばとかりんご飴とか食べるから。」

ムカついて、お祭りに仁を置いてひとりで家に帰ったんだ。
でも、次の日うちに来たときに仁が持ってきてくれたのは、私が欲しかったピアス。
一発で取れたからやるって言って、私にくれた。

「へ〜一発で取れちゃうなんて、すごいんだね〜。」
「ううん、違うの。後で聞いたんだけど、一発で取れたって言うのは嘘だったんだ。」

あまりに必死になって取ろうとしてたものだから、射的のおじさんがおまけでくれたんだって。

「なんかもうそれ聞いたとき、おかしくて面白くて。」

馬鹿だよね、全く。

「でも、片方しかしてねぇじゃねぇか。」
「あぁ、片方は仁にあげたの。全然してくれてないけど。」

せっかくおそろいにしたのに。してくれなかったら意味無いのにねー。

「なんか・・・妬けちゃうな〜。」
「え?」

何?とジローに聞き返そうとしたとき、外からあったー!という岳人の大声が聞こえた。

「え、マジで!?ちょっと待って!!」

ちょっと行ってくる!と言って、私は倉庫を出た。






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