sit in the sun | ナノ

25-6


「映、さっきからそわそわしてどうしたんだよ?」
「え?」

アップのランニングから戻ってきた岳人に、ふと尋ねられた。

「私、そんな落ち着き無かったかな?」
「さっきから体育館棟ばっか見てたぜ?」
「あー、うん。その・・・ちょっとね。」

そんな曖昧な返事をすると、後ろから跡部に声をかけられた。

「・・・15分だ。」
「はい?」
「だから、15分だけサボっても目瞑ってやる。」

それ以上は待たねぇからな。と言ってコートに戻っていった。
・・・得意の眼力で私の考えてたことはお見通し、ってことか。
悔しいけど今は跡部のくれた15分をもらい、私は体育館棟へと走った。
昼休みに萩が私に教えてくれたことが本当なら、そこに彼が居るはずだから。

「・・・居た!」

体育館棟のトレーニングルーム。
陸上部に混じって基礎トレをする彼の姿が、そこにはあった。
遠くからでも分かる。彼は・・・




「宍戸!」




大声で呼ぶと、周りにいた人たちが怪訝な顔でこちらを見た。
そして、宍戸も。

「宍戸!・・・って、え、待ってよ!」

目が合ったと思ったら、急に背中を向けて走り出した宍戸。
これってもしかしなくても、逃げられてる?

「ちょっと、待って!待ってよ宍戸!」

大声で叫んでも、尚も走り続ける宍戸。
私も必死になって後を追う。






ーーー宍戸、レギュラー落ちしてから毎日体育館棟にあるトレーニングルームで基礎トレしてるみたいだよ。
たぶん、テニスコートに戻るに戻れないんだと思うんだ。アイツって、すごくシャイなとこあるじゃん?






「待って!止まって!話聞いてよ、宍戸!」

萩から教えてもらった時、決めたんだ。
私が連れ戻すって。

「・・・宍戸!」






ーーーあ、あともうひとつ良いこと教えてあげる。
宍戸はね、・・・






「待ってってば!・・・亮!!」
「ーーーなっ!!!」




ーーー亮って名前で呼ぶと、必ず止まるよ。




「やっと、捕まえた!っあ゛ー疲れたー!!」
「っな、何でお前がここにいんだよ!?てか今、ななな何て・・・!」
「亮って呼んだだけだよ。あと場所は萩に教えてもらった。」
「アイツ・・・!」

余計な事言いやがって、と苦い顔をしながら言うと、宍戸は大きなため息をひとつ吐いた。

「何で、コートに戻ってこないのよ。ていうか、何で私から逃げたわけ?」

真っ直ぐ宍戸を見つめてると、観念したのか私の方を向いてぽつりと呟いた。

「・・・のこのこ戻れるわけねぇだろ。」
「そりゃ、レギュラー落ちしたから部活に来辛いのは分かるけど・・・。でも、3日も来ないこと無いじゃん。みんな、宍戸が戻ってくるの待ってるんだよ?」
「・・・それもあるけどよ、」
「え、まだあるの?」
「・・・お前に、合わせる顔が無かったんだよ。あんな大見得切っておいて、ダセェ負け方しちまったからな。」
「・・・え?」




何、そんなことで悩んで部活来なかったの?




「・・・ほんと、ダサイよ。」
「悪い・・・。」
「ダサイ。ダサ過ぎ。激ダサ!」
「なにもそこまで言う事ねぇだろ・・・。」
「五月蝿い、口答えするな!激ダサ宍戸め!」
「・・・。」
「・・・さっさと、帰って来いっての!」

バシン、と腕を叩くとイテェっと宍戸が声をあげた。

「悪いと思ってんなら、さっさと戻って来い!激ダサ亮!」

尚も腕をバシバシ叩く私。
すると上から、泣くのか笑うのかどっちかにしろよって優しい声が聞こえた。

「なっ「ありがとな、映。」
「ーーーっ!」

ずるい。
そんな笑顔で言うなんて、ずるいよ。
もっと、もっと文句言ってやろうと思ってたのに。
ずるいんだよ・・・




「亮!」
「何だよ?」









おかえり!
ーーーあぁ、ただいま




(20090219/20100601修正)

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