sit in the sun | ナノ
25-5
「さてと、教室戻ろうか。」
萩が言いながら立ち上がったので、私もベンチから立ち上がって萩を見た。
「ありがとう、萩。」
「俺はお礼されるような事は何もしてないよ。」
「ううん、萩のおかげ。萩が話してくれたからだよ。」
萩が言ってくれたから、あんなにもやもやしてた気持ちが、今は嘘みたいにすっきりしている。
「・・・じゃあ、もうひとつ言っておこうかな。」
「え、まだあるの!?」
バッと振り向くと、萩にふふと笑われた。
な、何だろう。
「ドリンク。この3日間、味が最悪だったよ。」
「う、嘘!?だって・・・」
誰も何も言って無かったよ?
あのドリンクに五月蝿い跡部だって、何も言わずに普段通りに飲んでたのに?
チラッと萩を見ると、そう言う事って笑いながら言われた。
・・・跡部も、普通なんかじゃなかったんだ。
「今日からは、美味しいドリンク飲みたいな。」
「・・・はい、分かりました萩様!」
ぴしっと戯けて敬礼をしてみせると、どちらともなく笑みがこぼれてきた。
「じゃあ、もうひとつ。」
「え!?今ので終わりじゃないの!?」
「ふふ、これは良い話だと思うよ。」
「良い話?」
そう言って、私にそっと近付いて耳元で囁く萩。
「・・・どう?」
「うん、ありがとう萩。」
「どういたしまして。」
それから他愛も無い話をしながら歩いて、萩とは教室の前で別れた。
別れ際に映と名前を呼ばれ振り返ると、掌にぽつんと飴を渡された。
昼休みに呼び出したお詫び、と言って。
「あ、映おかえり。」
「ただいまー。」
「滝、なんやって?」
「ううん、何でも無いよ。」
そう言うと、そっかと言いながらぽんぽんと頭を叩かれた。
「何?どうしたの?」
「いや、何でも無い。」
変なの、と思ってなっちの方を向くと、やっといつもの映に戻ったみたいね。と笑ってこっちを見ていた。
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