sit in the sun | ナノ
25-4
「映、俺たちはね、日本一を目指して大会に挑んでるんだよ。」
真剣な顔になってどうしたのかと思ったら、突然そんなことを言われて驚いた。
そんなこと、分かってるよ。どうしたの急に?と少し笑いながら答えたら、映は分かってないよと返された。
何か少しむっとして萩を睨むように見ても、映はちゃんと分かってないともう一度言われた。
「日本一になるってことは、これから勝ち進んで行くってことだよ。負けないってことだよ。」
「・・・萩、私を馬鹿にしてんの?そんなこと分かってるよ。」
「じゃあ、何で宍戸は例外なの?」
「え?」
「相手が全国プレイヤーだったから?そんなの、これから日本一を挑む俺たちにとって何の言い訳にもならないんだよ。」
「そ、それは・・・。」
「宍戸は、負けた。それを可哀想だからって理由でレギュラーに戻したところで、どうなるの?全国に行ったら、橘レベルの選手なんかゴロゴロいるんだよ。」
「ーーー分かってるよ。」
そう絞り出すように声に出した。
分かってる、分かってるよ。
ーーーいや、嘘だ。
萩に言われるまで、全然分かってなかった。
私が善かれと思ってしていた行為が、ただの同情だったってこと。
宍戸の為と銘打った、私の自己満足だったんだ。
「俺はね、映を責めてるわけじゃ無いんだよ。ただ、いつものようにもっと周りを見てほしいんだ。」
「周りを、見る・・・?」
「そう、周りを見る。映は、本当にみんなが宍戸が居なくなったのを何とも思ってないと思う?」
萩にそう問われて、ここ数日を振り返ってみた。
「宍戸が居なくなったのを何とも思ってないやつなんて、ひとりもいないだろ?」
そういえば、ここ数日岳人の元気良く飛ぶ姿を見ていない。
ジローは珍しく部活中起きていた。何かを待っているかのように。
ーーーあぁ、そうだったんだ。
「ね?みんな、映と同じくらい思ってるんだよ。そして、宍戸なら帰ってくるって信じて、毎日練習してるんだよ。」
ぽんぽんと、不意に萩に頭を撫でられた。
横を見れば、いつもの優しい笑顔がそこにあった。
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