sit in the sun | ナノ
24-6
「待って、待って!」
届かない。
どんなに叫んでも、名前を呼んでも、届かない。
「お願い、待ってよ!宍戸、宍戸・・・!」
こんなに声を出してるのに、宍戸は振り向いてくれない。
背中がどんどん遠退いて行く。
「ええ、準々決勝でまさかうちが破れるとは。」
後ろで跡部が監督に携帯で結果報告をしていた。
・・・氷帝が、負けたと。
(しかしあの氷帝が負けるとはな)
(しかも相手は、不動峰っていうノーシード校だぜ?)
(あの氷帝を3-0で破るなんてな!スゲェよ不動峰)
(しかもシングルス3に至っては、6-0だったんだろ?)
(でも、氷帝もダッセェよな!負けたヤツ、試合始まる前はスゲェ自信満々だったのによ!)
外野から聞こえてくるささやき声。
思わず、耳を塞ぎたくなる。
だけどこれは全部事実。
負けたんだ、うちは。
別に宍戸は、不動峰を舐めてたわけじゃない。
そりゃあ多少油断はあったかもしれない。
でも、それだけじゃない。
相手が悪かったんだ。宍戸の今の実力じゃ、たとえ最初から全力で挑んでも彼には勝てなかっただろう。
「彼は、全国プレイヤーだよ。」
試合が終わった後に横を見ると、乾君がそう呟いていた。
仕方が無かったんだ。跡部にだって、勝てるかどうか分からないくらいの実力者だったんだ。
それなのに・・・
「はい、今後宍戸は正レギュラーから外します。」
「・・・跡部、待ってよ!そんな、1回負けたからって何でレギュラー落ちなの!?」
「・・・それが、氷帝で唯一のルールだからだ。」
「だって、相手は全国プレイヤーの橘君だったんだよ!?」
「相手が誰だろうが、負けは負けだ。」
「そんな・・・。」
なんでそんな簡単に割り切れるの?
だって、仲間でしょ?
ずっと一緒に練習してきた、仲間でしょ!?
「・・・ねぇ、嘘でしょ、跡部。」
宍戸、本当にレギュラー落ちになんてしないよね?
嘘だよね?冗談だよね?
「ねぇ、嘘でしょ!!?嘘って言ってよ!!!」
嘘だと信じたかった。
けれども、翌日の部室に宍戸のロッカーは無かった。
受け止めたくない
嫌だ、信じたく無い
(20090213/20100601修正)
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