sit in the sun | ナノ

20-5


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「あー痛い。ジンジンするー。」
「当たり前でしょう、あんなストレート打ったんですから。」




ドリンクのボトルに次々と水を入れていく私と、それを見てるだけの日吉。
頑張って仕事をする私と、ただ見ているだけの日吉。
ただ、見ているだけの日吉!
少しは手伝ってくれないのかーい!

「いやぁしかし、綺麗に入ったね私の右ストレート!さすが!」

もう手伝ってもらうことは諦めました。でもなんかじっとただ見られてるだけも辛いので話しかけてみることにした。
いやぁ、それにしても自分で言うのもなんだがさっきのは本当に見事な右ストレートだったなぁ。
襲ってきた相手の手をひらりと右に避け、そのままガツーンと!右ストレートー!
だけどそこは私、女の子なわけで。
力が弱かったのか、特に骨が逝っちゃうこともなく、卒倒だけで済みました☆
倒れた人は他の人たちが運んでったから、まあ心配はないでしょ。

「そこ、全然自慢になりませんよ。むしろ・・・いや、何でもありません。」
「むしろ、何さ?」
「・・・女性として、疑うものがありますよ。」
「んなっ!?」
「しかもさっきの話も。」
「話?」
「俺の個人練習の話ですよ。何で先輩があんなに詳しく知ってるんですか。」
「え、だってマネージャーだし。」
「ストーカーの間違いじゃないんですか?正直あんなにプライベートでの練習内容まで知ってるとか恐いです。」
「んなっ!?」

日吉はこんなに努力している子なんだとせっかくフォローしてあげたというのに、それをストーカー扱いだと!?おまけに恐いとか!
ッキー頭くるー!

「言っとくけど私が調べたわけじゃないんだから!跡部がなんか勝手に調べたんだから!」
「分かってますよ、そんなこと。」
「・・・は?」

必死に説明しようと思ったら、日吉にそんなこと当たり前でしょうと返された。
先輩にそんなこと調べられる技量があるわけ無いじゃないですか、と。冷たい微笑みつきで。
・・・。

「じゃあ俺、練習に戻るんで。」
「ちょ、ちょっと!?」

何も言い返せずにいると、日吉は私ひとりを水道に残し、さっさとテニスコートへ向かって歩いていった。
くそう、ドリンクまだ作り終わってないから追うわけにも行かないし・・・!
く、くそううう!




「ああ、そうそう。」




すたすた歩いていた日吉が何か思い出したのか急に止まり、こちらを振り向いた。

「右手、ちゃんと冷やした方が良いですよ。」
「あ、うん。」
「それと映先輩、休憩まで5分切りましたよ。」
「な、何だってー!?」

休憩時間まであと20分もある〜とか余裕持っていたはずなのに、いつの間にそんな時間経ってたんだ!?
ヤバいヤバい!
急げ急げ!




って、ちょっとまて・・・?




「日吉、今何て言った!?」
「・・・休憩まで5分切りましたよ?」
「その前!」
「手、冷やした方が良いですよ。」
「その後!」
「・・・。」
「え、ちょっと日吉!」

無言のまま、日吉はくるりと後ろを向いて行ってしまった。
・・・やっぱり、聞き間違いじゃなかったのかな。
確かに今、映先輩って・・・。
あんなに「あなた」とか「先輩」としか言わなかった日吉が、映先輩って・・・。

「どういう心境の変化なんだ・・・?」

あれかな、やっぱり私の右ストレートに惚れたのかな!
うん、そうだ、それだ!

「っと、それよりドリンク作らなきゃ。」

その時私はドリンクを作るのに夢中で、日吉の耳が少し赤くなっていたのに全然気がつかなかった。









一度だけ
不覚だな、拳を振り抜く姿がかっこ良くて思わず名前を呼んでしまうなんて




(20081104/20100601修正)

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