sit in the sun | ナノ

20-4


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あぁ、またか。


最初にそう思った。
200人を越える部員のいる氷帝テニス部で、2年にしてレギュラーになったのだ。
こんな僻みや妬みは日常茶飯事だ。

「なあ、どうやってレギュラーに入ったんだよ日吉。」


敗者切り捨て。


強いものだけが生き残れるこの部で、そんなこと出来るわけ無いだろ。馬鹿なのか、コイツらは。
下品な笑い声が響く。けれど別に我慢出来ないことじゃない。

「おい、なんとか言えよ。」
「ただ聞いてるだけだろ?教えてくれよ日吉、レギュラーにどんな手を使って入ったの「まずはあんたたち平部員の1.5倍のレギュラー用練習メニューをこなすこと。」




凛とした声が、後ろからした。




「それから、家で腹筋背筋腕立て各100回、素振り100回、早朝ランニング5キロ。それが日吉がレギュラーに入れたわけよ。」

ズンズンとこちらに力強く向かってくる平塚先輩。
それはさっきまで挙動不審にしていた人と同一人物とは思えないほど、堂々としていた。

「あと、あんたたちみたいにサボったことが1回も無いっていうのもね。」

俺達のすぐ前までやってくると、フンッと少し皮肉った笑いを込めながら平塚先輩は最後に付け足した。
完全に、喧嘩売ってるとしか思えない。

「テメェ、言わせておけば・・・!」

さすがに頭にきたのか、先頭にいたやつがキレて平塚先輩に殴りかかろうとした。


危ない・・・!


とっさに止めに入ろうと体を前に出す。
が、動けない。

「邪魔すんなよ日吉。」
「!?」

ニヤリ、と笑った顔が見えた。
しまった、油断した・・・!
前にいた男に気を取られて、後ろにいた別の男に捕らわれてしまった。
クソッ!

「くたばってろよマネジャー!」

男が右手を勢い良く突き出す。
ダメだ、止められない。
平塚先輩・・・!






「脇の締めが甘いよ。ストレートって言うのは・・・」






そこから先は、まるでスローモーションのようにゆっくりと時間が流れた。
そして俺は、ただそれを眺めていた。


美しいその動きに、魅入られていた。






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