sit in the sun | ナノ

19-3


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「映、これから空いとる?」




ホームルームも終わりみんなが一斉に帰り支度を始める中、忍足が映にそう尋ねた。

「ごめん、今日予定入ってるんだ。」

そう言って忙しく荷物を片付けはじめる映。
そんなに慌てるのが珍しいから、何これからデートにでも行くの?なんて。
ほんの冗談でそう聞いた。
だって映をからかうの楽しいんだもの。




「まぁ、デートになるのかなぁ。」

それなのに、出てきた言葉は予想外のもので。

「あ、そろそろ行かなきゃ。じゃあまたねなっち、侑士!」
「またね。」
「あ、あぁ。」

最後に私たちに向かってバイバーイと明るく言うと、映はあっという間に教室を出ていった。






「・・・。」
「忍足、顔崩れてるわよ。」
「・・・男前な顔に向かって失礼やなぁ。」
「上手く笑えてないわよ。」

そう言うと、佐藤にはかなわんなぁと小さく聞こえた。

「じゃあ、私も帰るわ。」
「なんや、佐藤もデートなん?」
「そうよ?」

別に嘘じゃないし、隠す事でもないので素直にそう答えた。
あら珍しい、忍足が目を開いて驚いてるわ。

「佐藤、彼氏いたん?」
「いるわよ。まあ違う学校だから会えるのは月に数回だけど。」
「そうなんや。何の繋がりなん?」
「昔同じテニススクールに通ってたのよ。」

佐藤に彼氏なあ。初耳やでと、未だに驚いてる忍足が何か新鮮で面白かった。
いつもポーカーフェイスで何を考えているか分からない忍足が、子供みたいにくるくると表情を変えていた。
他人のことなんかに興味を示さなかったあの忍足が、だ。

「忍足、変わったわね。」
「ん?」

映が来てから、良い方向に。

「昔より、今の忍足の方が好きよ。」

そう告げれば、忍足は照れくさそうに笑った。
年相応の、綺麗な笑顔だった。

「おおきに。」
「お礼を言う相手は私じゃないわよ。」
「・・・せやな。」

少し忍足を応援しても良いかな、と思った。

「じゃあまた明日ね、忍足。」
「また明日。」

だけど・・・。


「それじゃつまらないわね、私が。」




だって波乱があったほうが、日常は楽しいでしょ?






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