sit in the sun | ナノ
15-3
「おいジロー!」
足の痛みに走れなくなって立ち止まったら、後ろから跡部が追いかけてきた。
「お前、どうしたんだよ。」
そんなこと聞かれたって、俺にも分からないよ。
「ねぇ跡部、俺、どうしたんだろ・・・。」
あんなこと、するつもりじゃなかった。
「なんで映にあんなことしちゃったんだろ・・・。どうしよう、どうしたら良いの跡部・・・!」
跡部は驚いた顔をしていた。
何か考えていたようだけど、最後には俺の顔を見て、
「とりあえず、映に謝れ。」
そう真っ直ぐ言われた。
「無理だよ、絶対嫌われたもん・・・。ちゃんと話せるわけ無いじゃん!」
突然あんな行動をしたんだ、映と話すのが怖い。
絶対、絶対嫌われた・・・!
「お前・・・あの映がそんなことで嫌うわけねぇだろ。」
「そんなの分からないよ!俺、映のこと思いっきり突き飛ばしちゃったC・・・!」
「あんくらいで映が怪我するとでも?」
ありえないな、と呟いた声が聞こえた。
「でも、拒否されたら俺どうしたら良いか・・・。」
パアンッ!!!
「うだうだうるせぇんだよ!言いたいことがあんなら直接あいつに言え!少しはあいつを信じろ!」
右頬がゆっくりと、じんじんと痛み始めた。
跡部のこんなに怒った姿ははじめて見た。
「・・・分かった。」
ぽつりと呟くと、跡部に帰るぞと言われた。
まだ足痛いんだろ?そう言って肩を貸してくれる跡部はいつもの跡部に戻っていて、俺は少し泣きそうになった。
俺はその後、跡部に言われたとおり映に謝った。
「・・・ごめん、映。」
「あ、うん、大丈夫。」
映はまた笑ってくれた。
「ジロー、右頬・・・」
跡部にぶたれた右頬に触ろうとして、映が手を伸ばしてきた。
!!
そして俺は、その手を避けた。
「・・・あ。・・・俺、練習戻るね。」
また、胸が痛くなった。
今まであんなに抱きついたりしてたのに、急に触れられるのが怖くなった。
その時の映の顔は、今まで見たことのない顔で。
俺はその顔がずっと頭から離れなかった。
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