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恋愛学に論理は要らない

窓を開くと冷たい風が入る。外はもう冷え切った空気に不安定な気候。
吐く息は白く、窓を閉めると少しずつ部屋は暖められていった。
扉を開け、階段を降りる。
今日も寒い中魔道院に向かうナインは、荷物を乱雑に鞄にしまい、歩き出した。
「今日、0組に新しい人が来るみたいですね。」
「あ、そいつさっき会った。なんかすげー可愛らしい奴だった。」
「へえ、それって女の人ですか?」
ー…そういえば、昨日シンクが言ってたような。転入生とは女の子なのだろうか。
一度お手合わせを願いたかったが、女の子だと本気を出せないじゃないか。
と、思うナインは根っからの戦闘馬鹿である。
クラサメの従姉妹に値すると聞いたのだが、ナインはクラサメをあまり好いては居なかった。
普段無口で口元を隠す大きなマスクで表情が見えず、何を考えているか全く分からない。
正直言えば苦手であった。
そんな隊長の従姉妹となれば、正直苦手意識を持つだろう。と考えていた。
「わっ!」
驚いた声がすると、体同士がぶつかり倒れる。
考え事をしていたのだ。咄嗟に受け身をとったのは良いが、ぶつかってしまった相手が倒れてしまう。
「だ、大丈夫か…コラァッ!」
咄嗟に手を差し出し手を引くと、相手の目を見て暫く見惚れてしまう。
透明なアイスブルーの瞳にさらさらしたプラチナブロンドの髪。肩まで伸びる髪に少し幼さが残る整った顔立ちは、見ている者を引き込ませる。
「すまない。少しぼけっとしていたみたいだ。」
どちらかというと中性的な声。凛とした佇まいに圧倒された。
此方と美人に平然と対応できるスキルは持ち合わせて居ないのだ。
あのー。どうしました?という声も聞こえてはいない。見るからに固まっている。
「聞いてないな…手を貸してくれてありがとう。また。」
颯爽と去っていく姿に道行く人は振り返る。
ナインはその場にしゃがみ込み、顔を赤らめながら顔に手を当てた。
「あー……名前聞けば良かった」
大人っぽいグレーのアーガイルのワンピースに薄い化粧を施す彼女は、きっと女の子なのだろう。
嬉しさを抑えることができないナインは、何時もより速足で教室へ向かう。
重い扉を開けてエントランスに入ると、先ほどまで重かった足取りも軽くなる。
また、どこかで会える。そんな気持ちが溢れていた。


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