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恋愛学に論理は要らない

ー朱の魔法遣い。
朱雀の魔道院のエントランスを左に抜けると、かつて幻と言われたクラスゼロ。所謂、特別厳しいミッションを任される0組という教室がある。
本当は存在しないのでは、と噂される幻の存在だった彼ら。
優秀で、戦闘センスも抜群。であるはずなのだが、少なくとも彼には、優秀と言う言葉は似合わない。
クラスの中では乱暴で言葉遣いも悪く、成績は優秀とは言えない。
彼、ナインの辞書には勉強という言葉は載っていない。
彼は「勉学」「読書」「テスト」という言葉が嫌いで、ミッションを武力によって着々とこなしていくのが得意分野だった。
今は、0組隊長であるクラサメ指揮官の氷属性による攻撃魔法の授業を受けている。
最も理論的な学術など得意分野ではない。ナインはクラサメに答えを求められたが、答えられない。
なんとか誤魔化そうか考えている次第だったが、頭が回らなかった。
「……ブ、ブリザードだコラァッ!!」
「…残念だ。もう少し頭を捻ってみろ。」
クスクスとクラスの仲間に笑われ、からかわれる羽目になるのが彼の役割だった。
「いつも使っている魔法がわからないとは…感服しますね。」
「えー、シンクちゃんもわからなかったよぉ?」
「ぼけてるんですか?」
「トレイが頭よすぎるんだって〜!私達くらいが丁度良いんだよぉ。そうだよねぇ、ナイン。」
「うっさいぞコラ!」
いつものやり取りに溜息を吐くサイスは気晴らしに教室を出ようと立ち上がる。
「…サイス。何処へ行く。」
「外の空気吸いに。」
「……勝手にしろ。」
終礼の音が鳴ると、そそくさと立ち上がる0組の生徒。ただ一人授業の復習を終えた彼女、クイーンが参考書を閉じた。
「そぉいえば、0組に新しい人が入るんだってぇ!シンクちゃんびっくりしちゃったぁ〜。」
「生徒か?」
「なんかぁ…クラサメ隊長のいとこらしいよぉ。可愛いかなぁ…。シンクちゃんびっくりして惚れちゃうかも〜。」
「全く、シンクの頭にはついていけませんね。」
「強いのか?」
「ここに入ってくると言う事は強いという事でしょうね。」
「俺と勝負しろコラァ!」
「まだ居ませんよ?」
「いい方だと良いですね。」
デュースはにっこり微笑む。
机の上の参考書や資料を片付けると生徒と先生に挨拶をし、教室を去った。
静かな教室の隅に忘れられた本が風に揺られパラパラと捲れる。
教卓の花瓶に差された花が揺れ、花弁がひらりと落ちた。


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