透き通るガラスから見える風景は、とても賑やかなものだった。 辺りは子どもたちの笑い声や人々の歓声に包まれ、甘い香りが鼻を霞めた。 楽しそうな場と対に、ガラスから歪んで見える景色。少し不愉快になりながらも、彼はため息を吐いた。 どれも今の自分の気持ちに似つかわしくない。 何故ここにいるんだ、なんて思いながらもなにかを期待している自分にへどがでる。 どれも機械的な機材で出来たベンチに仰向けになり、先程飲んだ飲料水の空になった瓶から空を透かしてみた。 突然、見慣れている顔が視界に入る。 「なーにやってんだよ。」 「わっ、」 びっくりして飛び上がると手に持っていた空になった瓶は割れ、頭同士がぶつかった。 「いってー…」 「いったい…ってそれはこっちの台詞。」 不機嫌な顔でやたらと背丈が高い男性を睨みつける彼、ホープはわざと片方の手に持っていたノーチラスパークのパンフレットで彼、スノウの頭を叩いた。 バカスノウ。と吐き捨てると、さっさと召喚獣パレードのある方へ歩いていってしまう。
先を急ぐホープの後を追い、手を掴むと、ホープは振り返った。 「待てよ。」 「なんか文句ある?ていうかなんで、僕はお前とここにいるんだよ。」 「………。」 ホープは大学の研究の一環としてノーチラスに訪れていた。 コクーン内で最も現代の人々が好んでいるテーマパークを訪れレポートを書くという名目だが、せっかくの長期休暇。彼も日頃の疲れを癒し、羽を伸ばすということだ。 しかし、せっかくの休暇だと言うのに、彼のせいで台なしだ。 自分が此処で一番一緒に居たくない彼、スノウが声を掛けてきたところから彼の機嫌はがらりと変わった。 スノウは恋人のセラと此処、ノーチラスを訪れていたがセラと逸れてしまった。 大学の授業の一環としてノーチラスに訪れていたホープは、スノウに声を掛けられ一緒にセラを探してくれと頼まれていた。 それにしても、このバカスノウはどうにか為らないのか。 セラさんを探しているにしても、思いっ切り楽しんでいるように見える。 先程ベンチで仰向けになっていた時も、なにか買ってくるとか言って楽しそうに飛び跳ねていった。
なんでスノウとこんなところにいるんだ。 と思いながらも、歩き続けた。
いつの間にかスノウと逸れてしまったのか、辺りを見渡せば、人々がたくさん溢れる中立ち止まっていた。召喚獣パレードが行われている場所から遠く離れ、パレードが終わり、観客たちがいそいそと散らばっていく。 暫くぼーっと空を見上げると、飛行機雲が空をかけるように描いた。 ふと、意識は遠い記憶の中、思いを馳せていた。
***
「ホープ」 呼ばれた方へ振り向くと、桃色のウェーブがかかった髪を揺らしながら手を振る彼女、ライトニングがこちらを見ていた。 「ライトさん、遅くなってすみません。待ちましたか?」 今日はコクーンにあるノーチラスパークにライトさんと観光に訪れていた。 辺りは人々に溢れ、賑やかな雰囲気に気持ちが温かくなる。 子ども達の笑顔を見守る親たちは、とてもしあわせそうで、たくさんの人々の笑顔に溢れている。 大好きな人の笑顔の隣にいれるだけで、幸せな気分になる。 そんな些細なことでも、自分にとって最高な時間だった。
「あの、歩きましょうか?」 「そうだな、すまない。ぼんやりしていた。」 緊張していたのは彼だけではなかったようだ。 先を急ぎましょう、と彼女の手を引いたホープは歩きだす。 観光艇ステーションを訪れパレード、チョコボたちと触れ合ったり、魔王城、実に様々な場所を訪れた。 たくさんのイベントを楽しみ、空はもう、夕焼け空に染まっていた。
「ホープ。少し待ってろ。」 突然ホープに諭すように言うと、駆け出してしまった。 ぼんやり遠くを見ていると、突然、視界に入る。 ひんやりとした飲料水だ。 コールドのブラックコーヒーと書いてある。 どうやら、疲れた顔をした僕に、ライトさんは気を使ってくれたみたいだ。 本当は僕がちゃんと気を配らなきゃいけないのに、と頭を抱える。
「お前はこっちだ。」 ブラックコーヒーの変わりにサイダーの冷たい飲料水を渡されると、ホープはがっくりときた。 「……ライトさん、僕、もう少しで大人ですよ。ブラックコーヒーだって飲めます。」 「そうか?昔、ブラックは飲めないってスノウが言ってたんだが。」
くすくすと笑いながらホープを見つめるライトニングに、ホープはやられた、とうなだれる。 「…昔の話ですよ。ライトさん、そっち下さい。 「お前、なにぼーっとしてるんだ?」
「ライトさ…あれ、えっええ!?」 気がつくと目の前に飲料水を片手に持ったスノウがにんまり笑っていた。 気持ち悪いと言おうとしたけれど、はい。と持っている飲料水を渡されたので、今回は辞めとく。 「なんだよ、急に。」 「なーんだ要らないのか。」 「あ、返せよ。」 「お前はこっち。」 渡されたのは、ブラックコーヒー。 また子ども扱いされると思っていたが、意外な反応。 「もう、ホープも立派な大人だもんなー、二十歳だよ。はたち。…なんだよ要らないのか?」
「仕方ないから貰っとくよ。」 ブラックコーヒーを強引に受け取ると、カシュッと爽やかな音を立ててコーヒーを飲み、ホープはさっさと歩きだす。 遠くで、今度飲みに行こうなーという声も聞こえないふりをして、缶コーヒーを飲み干した。
夕焼けを見つめていた彼が少し笑ったのは、彼には秘密だ。
fin.
------------ ぐだぐだすみません! これでも一生懸命書いていm(ry こんなんでいいのか、なんだかずれてる気がします*笑 なんだかタイトル矛盾している気がしてきました。まあ、いいですよね。 あれ、セラはどうなったのかな? まあいいかなあ(ひどい)
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