(数年後?設定)
いつもの星空が見える場所で彼女は泣いている。 彼は、何故彼女が泣いたのかわからなくて、ただ驚き宥めようとした。 しかしそれは違っていて、あたたかいなにかが心にしみていく。 「泣かないで下さい。」 「泣いた顔は見たくないって、前も言いました。」 徐々に消え入るような声で、泣き止んでいく。 過去にも、こんな風に彼女は泣いていたっけ。
ー……約束。でしたよね。 遥か遠い過去から想いは届く。 彼は、遥か記憶の中、想いを馳せていた。 ****
空にはスポットライトのように無数に輝く光が僕たちを照らしている。 この時が来るのも、わかっていた。 同時に不安が胸を渦巻いている。 ああ、星たちも僕に味方してくれるだろうか。 ずっと僕に照らしてくれている光は、雲に隠れてしまわないか。 空には僕たちを照らしているスポットライト。目の前には、ずっと想い続けていた人がいる。
「ライトさん、聞いて下さい。」
真剣な表情で真っすぐ彼女を見る彼、ホープは、大事な話しですから、と言った。
「…ずっと、言えなかったんです。」 「…なんだ、いってみろ。」 自分は今にも泣きそうで、堪えるのが精一杯だった。 なぜなら、自分より強いと思っていた彼女が、今まで見たことない表情をしていたから。 彼女だって弱い部分もある。 今まで、自分に弱さを見せたことのないことが少し淋しい。
「僕、パルスに移住することになりました。」 「…どういうことだ。」 「知ってると思いますが、大学の研究でパルスの調査隊に入ることになりました。…それで、6年間、パルスで研究を続けることになります。」 いまのコクーンでは、パルスに行き来することは規制されており、民間では立ち入ることもできない。入れるものは限られており、政府はパルスへの移住を認めていない。 そんなことは軍の指揮官であるライトニングは知っている。 「…ああ、そういうことか。」
こんな時、いつも彼女は何でもない。というような表情で自分の感情を押し殺していた。 でも、いつも強く生きている彼女にも、弱さだってある。 そんな気丈な態度が、ホープの身を詰まらせているのがわかっているのだろうか。
「泣かないで下さい。」
「…泣いてない。」
ほら、やっぱり、
「…笑って下さい。」
こんな風に僕の胸を締め付けている。 でも、いま、自分にたいして弱さを見せてくれた時、少し嬉しかったのは秘密だ。
「僕は、ライトさんの笑っている顔が好きなんです。」
ホープはにこりと笑って、大丈夫です。と言うように背中に手をかけた。
彼はもう彼女の背を越し、二十歳を迎えていた。 6年前の幼い面影もなく、体つきは大人の男性のもので、声も変わっている。 もう、守られているばかりではない。 いつの間にか、彼女は守られている立場だった。
「ライトさん、左手を見て下さい。」
手を差し出すと、いつの間にか左手の薬指にクローバーを形取ったものだろうか、銀色の指輪が嵌めてある。
「…これは?いつの間に…」
「ライトさん、一度しか言わないから聞いて下さい。」
ゆっくりと顔を上げて、純粋な翠を見つめる。
「もう、明日にはコクーンを出ます。 あと何年かは戻れないでしょう。 その頃には僕は仕事で研究を続けています。
毎日、自分を磨いて、立派な人間になって、ずっとライトさんを守れるくらいになったら。 ライトさんの元へ必ず帰ります。
約束して下さい。 もう一人で泣くのは辞めて下さい。 ずっと僕が見守っています。 淋しい時も、苦しい時も、この指輪を見て思い出して下さい。
あなたは決して一人ではありません。」
涙を流す彼女は、今まで見てきた中で一番きれいでした。 これは僕からの魔法です。と笑って言うと、彼女は、もうルシじゃないだろ?と、笑った。 そう、その笑顔が好きなんです。
****
今、彼女は僕の隣で泣いている。 別れてから彼女は約束を守ってくれていたのだろうか。 でも、この涙は悲しいという涙ではない。 嬉しい、幸せ、がたくさん溢れている。 左手には、決して高価だとは言えないが、パルスでのお守りの宝石の付いた結婚指輪を見つめながらこう言った。
「今度は、僕が幸せにする番ですね。」
にっこり笑うと、頬にキスを落とした。
fin.
------------ 泣き虫ライトさん笑 たまにはこんなライトさんもいいかな?と思いますがダメですか? キャラ崩壊してますね苦笑 一人で泣かないで下さいは、心の中で泣かないで下さい、という意味です。 いろいろ矛盾してたらすみません。 きもかったらすみません。
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