暖かい窓辺から日が差し込み、時々そよ風がカーテンを揺らした。 暖かい春の陽気が心地よい。 ゆらり、ゆらりと体を揺らし、仰向けに椅子に座り、顔を隠すように愛用の本をのせる。 しばらく物思いにふけると、本をおさえていた腕も、力つきたようにだらりと両腕を下ろした。 銀色の髪がさらりと揺れ、さきほどまで聞こえていた喧騒も静かに消えていった。
まだ、温かい温度と自然の香りに、ただ、心地よくてまだ眠っていたかった。 まだ眠いけれど、ゆっくり瞳を開く。 目元にかかった髪をよけると、ゆっくり起き上がった。 周りを見渡すと辺りは大自然の中で、遠くにはたくさんの生き物がいた。 そういえば、パルスに来てアルカキルティ平原に大学での研究で訪れていた。 「ホープ。」 声がした方を振り向くと、桃色の髪を揺らしながら微笑むライトニングが隣に座り込んだ。 軍服を着こなし、華麗に任務をこなしていた彼女とは打って変わったライトニングの様子にほほえましくなってしまう。 いつも甘えることのない彼女に、いつも甘えていたのは自分で、それがいつしか自分が護るべき立場になっていった。
そんな時にも、前と変わらず時々見せる柔らかい表情にどんな時にも自分は救われていた。 なにかごそごそと鞄から取り出しているように見える。するとはい、とホープの片方の手を包み込むようににぎる。 なにかふわふわとした感触がくすぐったい。
「わわ、ふふふ。くすぐったいなー。なんですか?」 「まあ、みてみろ。」
恐る恐る手を開くと、黄色の雛チョコボが俯いていた顔を上げて不思議そうにホープを見上げた。
「ピィ?」
可愛らしい瞳で首を傾げる。なに?とでも言いたいのだろうか。 ホープは、母とボーダムに訪れていた時に、雛チョコボを見ていた。 その時に見たチョコボの瞳がいまのチョコボにそっくりで、思いだしたのか少し哀しくなる。 「どうした?」 ぼーっと雛チョコボを見つめていたので、ふと、ライトニングの方を見る。心配そうにホープを見るライトニングは、とても哀しそうだった。 自分が、彼女にそんな表情をさせていたのかと思うと、情けなくなった。 「いえ、少し、過去を思い出してかなしくなりました。 そういえば、あれからもうこんなに時が流れたんだなって。」
まっすぐに自分たちが旅路を歩いてきた景色をみて、それを真似てライトニングも見つめる。 今は、過去も現在も後悔はしていない。 あんなに臆病だった自分も、誰かを護りたいと想えるようになった。 生きてきた中で大切な人たちがいるから。母に守られてばっかりで、大切だった母も守れなかった自分が人を愛するようになったことも、すべて彼女が一緒にいてくれたから。 「なんか、この雛チョコボ、ライトさんに似てません?」 そうか?と小首を傾げると、小さく笑う。 「私はこんなに可愛くはないがな。」 「だって、似てます。」 「そうか…。」
自分では気付けていないことでも、ホープにはライトニングをずっと見てきた。他人の方がずっと自分を知っている場合もある。一緒に過ごしてきた時間が長いほど、あいての痛みや気持ちも深く気付いていく。
ー……… 「ピィ?」
暖かい風が部屋に入る。さらりと髪が揺れ、テーブルに俯いている彼の目の前に雛チョコボが小さく止まった。 目を開けると、銀色の髪が目の前を遮っている。起き上がると、雛チョコボがホープの周りを飛んでいた。
励ますように雛チョコボが声をかける。
「ホープ。」 いつのまにか隣にはやたらと大きな彼、スノウが嬉しそうな表情をしてホープの肩に手を掛けた。
「なんでここにいるんだよ。」
「なにって、ひっでーな」
笑いながらホープを諭すスノウは相変わらずだ。 あれから相変わらずなのもスノウぐらいかも知れない。 スノウにはスノウなりに仲間を励ましているのかも知れない。
「おっ!なになにホープ。かわいいなーその黄色の。」 ホープの周りを飛んでいる雛チョコボは、ピィ?とスノウを見て近づく。
「なんで僕の周りうろちょろするんだよ。」
「ごめん、かわいいもんで。あ、なんかこの雛チョコボ、ライト姉さんに似てね?」
「…………その子に気安く触るな。」
「あ?……わ、ごめんごめん。」
やっぱり、そうだよね。
今はいないけど、貴方のことはずっと忘れません。
スノウのことを、睨みながらそう思っていたホープは密かに笑った。
fin. ーーーーーーーーーーーーーー 表現がよくわからないところがありますが…。 何となくわかっていただけたら嬉しいです。
- 6 -
[*前] | [次#]
ページ:
|