伝説は此処からどうぞ



多分それはいつもの事、だったんだろうな。


「―――」


かこといがまた訳の分からないとこを吐かした。あいつは同じ時期に生み出された存在だからよく一緒くたにされたし、その辺の奴らより一緒にいたのは確実だったから別に構わないのだが、よく分からない奴だった。
何か途方もない事を考えているんだろうな、頭の出来は俺の方がいいようにしか思えないが多分考えている事が別次元なんじゃないかと思う。簡単に言うと突拍子もない奴だ。だから俺は今目の前ではっきり言われた事を字に変換することが出来なかった。
いや、したくなかった、だろう。


「…今なんと言った?もう一回言え」


隣で同じようにかこといの話を聞いていたセンリツもどうやら理解出来なかったらしい。
頭の次元的にはこっちの方が近いのだろうか、それもちょっと嫌だな。話の通じない堅物の癖に。


「じゃからなぁ」


年寄りみたいな口調をしてかこといは口を尖らせた。この間死んだじじいの真似だ、マスターと呼ぶには全然戦わせてくれない奴だったから俺はマスターと呼んだ事はなかった。友達と呼ぶにもあいつは年を取っていて、尚且つ人間だった。あいつの10年は俺達の1年で、出会った時はまだ若かった顔も皺だらけになるまでそれはもう早かった。だからじじいと言っても顔とか体力とかそんな話だ。
なんで捕まってやったんだったかと思い返す。確か最初にかこといが捕まってたからびっくりしたのだ。後で聞けば気に入ったんだとかなんとか、しょうがないからノリで捕まってみたんだ、ボールはやっぱり狭い空間だったから最初はよく苛々していた。
だがあいつはそれなりにいい奴、だった。じじいが死ぬまでたいした時間は掛からなかったが、あいつに捕まったのはそれなりに人生のターニングポイントだったと思う。

あのじじいが付けた名前のおかげで俺達は今擬人化していた。別に人間になりたいなんて今まで思わなかったし、名前を付ける意味なんてないから無くて平気でそれが普通だったから、初めて擬人化をしたのもつい最近の事だ。
擬人化すると皆同じに見えて複雑な気分になる。きっとこれだ、人間が名前を付ける理由。個々を区別、したいんだろ?

俺達はたまに擬人化するようになった。近付いても電気が走らなかったり凍らないのはなかなか便利だ。
今日も擬人化で適当な場所に座りながら、映える金髪を見ていた。原型の針だらけでは考えられない柔らかな髪が風にそよぐ。


「儂はポケモンの警察を作りたいんじゃ」


かこといが先程の言葉を繰り返す。今度はちゃんと字に変換する事が出来た、らしい。
反論の言葉を探すがどうにもまだ頭が追い付かないままだ。訳が分からん。

言い出すと止まらない奴だ。俺のよく知っているかこといは今日も健在でその原形を崩さずニタリと笑った。気に入らないところは数えてしまえば幾つもあるが、何より気に入らないのはそれを実現させてしまう力みたいな、そういうのがあるところだ。
これから忙しくなるんだろうなと嫌な未来を考えると笑えてくる。俺はその突拍子もない意見に反論しながら手駒のように動かされて、それを実現させようと一生懸命になるのだ。結局、それで満足するのは自分なんだろう。


「伝説は伝説を作るべきじゃろ?」


…まずは反論の言葉を見つけるところからだな。

















はじまりはじまり!








(そんな考えどっから拾って来たんだ)








End.


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