「…何やってんだろ」

 バレンタインだと浮かれるコーラを馬鹿にして出て来たが、今自分の手にはチョコが存在していた。
 別に貰った訳では、ない。
 店に入り女の子に混ざって小さめのチョコを買ってきたのは紛れも無く自分だ。このお祭り騒ぎに乗じて、なんとなく買ってきてしまった。

 ……言い直すと、意を決して買ってきた。

 女の子だらけの所に入るのは女顔と自覚がある自分でもそう簡単に入れる場所ではない。それでも買ってきた。
 こんなのを買うのは実は初めてだ。この日を特別重視した事もない。あげたい相手がいるというのは中々厄介で、チョコを手にしてからもうずっと心臓が大きく音を立ててうるさかった。自分ではないみたいだ。
 進む足が何度も止まる。そうなると自分は勝手に自分への疑問と言い訳を交互に積み重ねていく。

 大体、男がバレンタインにチョコをあげるというのはおかしな話で、でも最近は逆チョコというものが存在するし。女にはあるじゃないか、友チョコとか。それに別に告白がしたい訳ではないのだ。ただ、何と言うか。あげたいからあげに行くのだ。

 自分にも上手く言い訳が出来なくて、思わず自嘲に口元に笑みが浮かぶ。
 彼はどんな反応を示すのだろう。自分への言い訳に手一杯で全然浮かんで来ない。
 ただ今日という日の意味に気付かないで、自分のよこしまな気持ちを悟る事もなく、何の疑いもなしに、食べてくれたらいいな、と自分勝手に願った。



何と言うか、日頃の感謝を込めて。





(手作りする勇気はないです。)





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