温もりを感じて
季節は冬真っ只中。気温は零度を下回るという寒さを記録した。そんな寒さの中でも運動を絶やずにしているETUメンバー
「さーむーいーっ!」
「うるせぇ、後少しであったまんだろ」
「それでも寒いもんは寒いんスよー!」
走りながら大声を出す元気な青年は先輩の堺に怒られながらもグラウンドを走っていた。寒空の下、体を動かせば体は暖かくなるのは分かっているが、体が暖かくなるまでは時間がかかり寒さで体温を奪われる
「…は、」
「は?」
「はっくしょーん!」
「うわ!きたねぇ!手で抑えろ世良!」
「すびましぇーん!でも、とまらな…っくしゅん!、う゛ー…」
「今日は気温も低いし風もいつもより強いから世良、先に戻って風邪ひかないように体暖めておけよ」
「あい、すんませんコシさん…」
村越に言われれば素直にクラブハウスの中に入りストーブの近くに置いてあるイスに座る。
(もう少し練習したかったな…)
ストーブの側にいたお陰で大分体が温まってきたのを感じて徐々に睡魔がやってきて世良は瞼を閉じた
「ん、……あれ?」
世良が起きた時には皆クラブハウスに戻って着替えをしていた時だった。世良が起きた事に気がついたメンバー達が世良の頭をがしがしと強めに撫で風邪には気をつけろよと心配をしてくれる。
ふと、気が付けば自分の上にジャージの上着がかかっていた。誰がかけたのか分からずジャージの番号を見れば自分が大好きな人の背番号が描かれていた。かかっていたジャージを抱きしめ好きな人の匂いで安心する事が出来た。おもわず顔がにやけていた時に想い人はやってくる
「何、にやにやしてんだよ。」
「さっ、さかいさんっ!」
「具合は大丈夫なのかよ」
「大丈夫だと思います!」
「なんだよ思いますって…ほらおでこ貸せ」
ひやりとした手の冷たさに体がビクリとしたが、その手の冷たさに段々と心地良さを感じて目を閉じる
「…熱はねぇな」
「あ、あざーす?」
「なんで疑問形なんだよ」
すると、世良が座っていた横長のイスの隣に座り手を握ってきた。あまり手を握らない堺に対して世良はあたふたと慌てて顔を紅く染めらせる
「え、??さかい…さ?」
「この角度だったら見えねぇから」
「は、はい…」
横でぼそりと風邪ひくなよ。と聞こえる。世良は勢いよく首を縦に振り手から伝わる体温に体があったまるのを感じる。多少心臓が煩いけど、それは隣の人が大好きだから音が煩いわけで…
体が暖かいじゃなく熱いのもきっと愛しい人のせいなのだろうと思いながら手を握り返した
そしてこの温もりは自分だけのものなのだと思うと愛しい気持ちでいっぱいになり再び顔がついにやけてしまうと堺の顔が世良の顔に近付き触れるだけのキスをした
「この角度から見えねぇから、」
なかなか笑わない堺さんが優しい顔で笑うから心臓が止まるかと思いました。
end.
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