『なぁに、うさぎ!』
「○○たん、お酒はそろそろ止めないー?」
子供たちが寝静まった丑三つ時。大人たち2人はラウンジに集まって酒を煽っていた。
『いいのよ、ふははは!』
「飲ませすぎちゃったー☆」
『このウサギ!なかなかのドS!』
「○○たん、それは悪影響だよ」
『ウサギ!思う存分飲め!』
昔から、名前は飲みすぎるとタチが悪い。普段の彼女からは想像できない程に、テンションが高くなる。いわゆる、絡み酒というやつだ。
「○○たんはキツネだもんねー」
『そうだった!』
あはは、と楽しそうな笑い声を溢して変化する名前。変化した名前の姿は白と赤が基調の和装に、頭に大きな狐の耳と尻尾が生えている。彼女はその姿をなかなか人には見せなかった。
「なんか久しぶりに見たネー♪」
『ねぇねぇ、かげたんは!かげたんはまだこないのー?』
「もうすぐ来ると思うよ」
名前は顔を弛ませて下駄をカランカランと鳴らしながら、エレベーターの前に立つ。するとタイミングよく、電灯するランプがラウンジの階で停止して扉が開いた。
『かげたーん!』
「うおっ」
「遅いよ、かげたーん☆」
「すっかり出来上がってしまっているな、名前は!」
蜻蛉が名前の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。そんな彼女に満足したのか、蜻蛉も笑ってみせた。
『かげたん、へんげしてー!』
「快いぞ快いぞー!」
『わーい、角だー』
「酔うと表情豊かになるよねー」
『かげたんの着物ちょうえろいー!ふへへ、このかげたんも好きぃー』
「“も”だってさ〜!良かったね、かーげたん」
「普段の名前にも言ってもらいたいのだがな!ふはは」
「酔った時の行動って、普段したくても我慢してることなんだってー♪」
「…………ほう」
抱き付いてくる名前を見つめる。この行動が普段からしたくても我慢しているんだと思うと余計に可愛く見えてきてしまう。
「…だ、抱き締めても良いだろうか」
「蜻たんってさ、実は硬派なヘタレだよねー」
『……すぅ』
「「タイミングよく寝たな」」
翌朝、蜻蛉の部屋で目覚めた名前がパニックに陥ったのは、また別の話。
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120328