『ただいまー!』
「帰ってきたぞ、肉便器たちよ!」
妖館から離れて一週間、私たちは戻ってきた。ラウンジの皆は、揃いも揃って目を見開いていた。そ、そんなに驚くことかな。
「名前!お前、一週間どこでなにをしていたんだ!」
『りりちよちゃん…!』
もしかして…心配してくれたの!?うっそ、それは嬉しい泣いちゃう。
「名前さまは今までどこに?」
『草津!』「温泉だ!」
「草津温泉…?」
そう、なにを隠そう私達は草津帰りなのである。一週間前に、蜻蛉にラウンジで待ってろと言われて素直に待っていたら半強制的に連行された。皆に何も告げなかったことや、携帯は部屋で充電しっぱなしで財布しか持っていなかったことが気掛かりだったが、この際温泉旅行を満喫することにした。
「名前ちゃん、もしかして草津では浴衣を…」
『うん、流石にスーツはね』
「な、なななんですって」
「そんなに浴衣が好きなのかー?」
「それもそうだけど!普段スーツを着ている名前ちゃんは、私服ですらレアなのよ!?それを…浴衣だなんて……はだけた胸元とチラリと覗く太もも…メニアック」
恐れ多いです。
『お土産、皆で食べれるから良いかと思ってお菓子にしたから。後で食べてね』
「私からも土産だ!」
ありがたく受け取れ、だなんて。できれば拒否したいだろう。残夏は毎回鞭だからなぁ。
「双熾と元許嫁殿には荒縄だ!」
「何に使えと!」
「有り難く頂きます」
『ん?元?』
元許嫁殿って?
『蜻蛉、なんか私に説明していないことがあるんじゃい?』
「あ」
『木綿、そのボールギャグ貸して』
「名前さま、程ほどに」
「名前、違う、ただ言い忘れていただけでだな」
『双熾は皆にご説明よろしく』
「わかりました」
なんで元許嫁なんだ。いつ元許嫁になったんだ。笑顔で頷く双熾も関わっているんだろうな。だいたい予想はつくけど。とりあえず蜻蛉をエレベーターに引きずり込んで、彼の部屋に入る。
『蜻蛉』
「先日、双熾が手紙のことを凛々蝶に話したのだ。その結果二人はくっついたようだし、許嫁など要らないだろう」
『…蜻蛉はそれでいいの』
「元々、家が勝手に決めたものだからな。誰だって自分の好きな奴と一緒にいる方が幸せなのだ。そ、それはもちろん、私も同じでだな」
『んー?』
「つ、つまり」
『好きよ、蜻蛉』
「…!」
私が初めて自分の気持ちを言葉にした日だったと思う。
「我々も結婚を前提にお付き合いをすることになったぞー!わはは」
『結婚は分からないけど』
「なかなかのドS!」
「かげたんと○○たんは今まで付き合ってなかったのー?」
「そうよ、だってあんなことやこんなこともして…」
『んー…セフレ?』
「相変わらずサラッと言うね♪」
『だって、許嫁がいた訳だからさ…』
「名前の口から好きだと言われたのも初めてだったぞ!」
『蜻蛉うるさい!』
「純情な名前ちゃんもメニアック!」
『野ばらちゃん、あんなことやこんなことって言ってたけど、蜻蛉は童て「名前さま、それはデリケートな話題です」
「えげつないドSだな」
「おー?つまりどういうこと?」
『一方的な前戯だけ』
「「「(…可哀想に)」」」
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120327