いぬぼく | ナノ





―モウスグアエルヨ


『うっわ、きもちわる』

「名前、どうかしたのか?」

『迷惑メール』

「迷惑メールだと?僕も…」

『りりちよちゃんも?あー…じゃあ私はスルー安定で』


私はここ、メゾン・ド・章樫でSSをやって…いきたいのは山々だが、中々雇い主が越してこないだけの女の子。まぁ、22歳だけどね!悲しいね!ごほん、先日から一定の間隔で迷惑メールが届くようになった。それは凛々蝶ちゃんも同じようで、胸騒ぎというか嫌な予感がする。


「おはようブタども!昨晩無事帰還したぞ!」


ほら、やっぱりねー。


「かげたーん!」

「久し振りだな、M奴隷よ!」


私はラウンジに足を踏み入れずにいた。だって、だってこんなカオスに入り交じりたくないもの。


「私は青鬼院蜻蛉、双熾の元主であり、白鬼院凛々蝶の婚約者だ」


その発言に住人たちはざわめきだす。そらそうですよね。はぁ…入りたくないなぁ。コンビニにでも行こうかな。


「…名前さま、お出でになってください」


踵を返そうとした時に、壁越しに双熾に名前を呼ばれた。なんだアイツ!気付いてたのか、あの狐野郎め。…あ、私も狐だった。その場を片付けてやろうと思い仕方なく、重たい扉を開いた。こちらを見て目を輝かせる野ばらちゃんが見えたけど気にしない。


『……………お呼びかな』

「おぉ、肉便器よ!ご主人様が帰還したぞ!喜べ!ふははは」


非常に残念だがこのアホは私のいとこだ。兼幼なじみである。そうは言いつつも、なんだかんだで彼の帰還を喜んでいる私がいるのは事実だ。


『…おかえり、蜻蛉』

「貴様にも土産がある!受けとれ!」

『一応、聞こう。この袋の中身は?』

「バイブとローションだ」

『いっぺん死ね』

「ふはは、私が留守の間はそれで自分を慰めるがいい!」

『……はぁ』


周りの住人を見渡すと、みんな疲れきった顔をしている。特に興味もなさそうな人も居れば、興味津々にこちらを見つめている人もいる。


「名前ちゃん!私の名前ちゃんとその変態はどういう関係なの!?」

『ただのいとこ兼幼なじみだよ、野ばらちゃん』

「○○たんも素直じゃないなー」

『残夏、うるさいよ』

「名前、素直になればいいだろう!このドMめ!」


毎度のことながら、その一言がカチンとくるのは私も変わっていない証拠のようだ。


『ふふ、私二度寝したいんだよね』

「あ」

『丁度いい、コレの相手してあげる』


私は彼から貰った(いらないけど)紙袋を片手に笑う。少し焦りが見える蜻蛉のマントを引っ張りエレベーターに乗り込んだ。二度寝出来そうで良かった。


「名前ちゃんの乱れた姿が見れるなんて実に羨ましいわ!ああ…メニアック!」

「…多分違うと思うよ〜」

「え?それって…」



―午後、ラウンジ



『皆おはよう』

「○○たん、おっはよー♪」

「名前さま、今まで眠っていたのでしょうか?」

『うん、目もぱっちりー。私はご飯を食べてきまーす!』

「いってらっしゃーい♪」



「…で、蜻蛉さま」

「ふはは!…相変わらずのドSだ」

「かげたん、お肌つるつる」

「あれから放置されていたからな!」

「名前ちゃん…可愛くみえてなかなかやるなんて素晴らしいギャップ萌えよ!なんてメニアックなの!!」

「昔から名前さまは自分が“ドM”と言われるのがお嫌いなのです」




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120326


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