いぬぼく | ナノ





─ピッ


『……こんなもの』


そこに表示される「38.0」という小さな数字には全く驚かない。細く小さな器具を床に叩き付けてやりたい。あ、少し目眩がした。叩き付けるのは止めておこう。

ただの風邪で体温が普段より少し高いだけである。なのに、


『(耳と尻尾が隠せねえ…)』


頭に手を持っていくと、確かにそこには柔らかい感触。中途半端に変化したはいいけど、上手くコントロール出来てないみたいだ。

普段から平熱は高い方だから、あまり辛くはない。むしろ元気!…いや、これは言い過ぎた。幸い、今日は予定がない。食事にしよう。

しかし待てよ名前。こんな中途半端な格好でラウンジに行くのは、

恥 ず か し い !


『………ま、いっか』


熱のせいか、判断力が低下しているようだった。



―ラウンジ



「遅いぞ!」

「○○たん、おっはー☆」

『ん』

「名前様、心境の変化ですか?」


心境の変化ってどういうことだ。そうか、今日は月曜日だから余分三兄弟だけがラウンジに居るのね。


「余分三兄弟だなんて…ヒドイッ!」

『うぜえ』

「○○たんの口が悪い!」

「名前、風邪でも引いたか」

『熱が少しだけよ』

「だろうと思ってお粥を用意してやったぞ!ふはは、たんとお食べ」

『…いただきます、お母様』

「違う、蜻様だ」


うちの蜻蛉は仕事ができる奴だ。


「名前は昔から体調が優れないと、今のように力をコントロール出来なくなることがよくあったな」

『そうなの…?』


私より私に詳しいとは、本格的にお母さんのポジションを確立しようとしているのかしら。…いや、蜻蛉は昔から私をよく見ていてくれてたんだなぁ。


『…ご馳走さま』

「残していないか?」

『うん、お母さん…ちょ、えっ』

「ふむ」


ふむ、じゃなくて!彼は前髪を横に分けて自らの額を私の額にくっつけてきた。


『わかるの?』

「全く」

『………』

「だが、普段よりも随分と体温が高いことは分かるぞ」


薄く笑った蜻蛉に頭を撫でられる。


「だから、今日は大人しく寝なさい」


蜻蛉のこういう一面に不覚にも胸が高鳴ったも、きっと熱のせいだ。


『………はい』




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120515
蜻様!!うー!にゃー!
最近、悦いぞ悦いぞって言ってない。


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