『あら、もしかして残夏ひとり?』
「そうだよー!皆は買い物に行ったみたい」
昼頃に目が覚めて、朝昼兼用の食事を摂ろうとラウンジに降りた。そこには他の住人たちの姿はなく、ウサギの耳を付けた彼しか居なかった。あ、オムライスにしてもらおう。
『そうか、夏休みだもんねー…』
「○○たんは最近お疲れモード?」
『最近は患者が多いみたいでね。昨日も帰ってきたのは深夜だよ、深夜』
「夏休みだからねー」
そうなんだよねー。頼んだオムライスを受け取って、残夏の向かいの席に腰を下ろす。…美味しそう。
『……あげないよ』
「いらないよ」
『ずっとこっちを見てたでしょ』
視線が気になって、最初の一口ですらまだ口に運べてないよ。
「○○たんってさ」
『うん』
「蜻たんのどこが好きなの?」
『え?…顔、とか言って欲しい?』
「いや、ただ気になっただけ」
まぁ残夏のことだから、本当にただ気になっただけだろうけど。
『うーん、全部?』
「いきなりSM判定始めるところも?」
『…残念ながら、それも含めての青鬼院蜻蛉なんだよね』
「本物か」
『本物よ』
「毎回お土産がムチなのはちょっと」
『あ!あと、蜻蛉のえへーって喜んでる顔がたまらなく好きかなぁ』
「ごめん、ちょっと分かんない」
『よくしてるじゃない』
蜻蛉の嬉しそうにしてる顔だよ。楽しそうというか、なんというか。
『明日にでも見せてあげるよ』
「蜻たんは明日に帰ってくるのー?」
『そんな気がしただけ』
温かいオムライスを口に運ぶ。あ、美味しい。そんな私の様子を残夏は見詰めて…ガン見してくる。
やっぱり食べたいんだ。試しにオムライスを掬ったスプーンを空中で移動させてみると、そのスプーンに合わせて目線が移動している。やっぱり食べたいんだ!でもあげないよ。
『あげないよ』
「そういえばさ、昔から蜻たんは○○たんに好き好き言ってたでしょー?」
『…あぁ、そうだね』
このウサギ、否定すらしないもの。
「○○たんも好き好き言ってた?」
『言ったことないよ』
「なんでー?」
『だって許嫁ちゃんがいたでしょ。お家に逆らってまで伝える勇気がなかったといいますか…』
「…ふーん」
そう呟いた残夏の、どこか煮え切らないような表情が何を意味するかは私には分からない。
『ごちそうさまでした』
「お粗末さま☆」
イラッとした。
─次の日
「帰ってきたぞ、愚民共よ!」
『やっぱり帰ってきた』
「蜻たんおかえりー☆」
『蜻蛉蜻蛉、ちょっとこっち来て』
「ほぅ、主人の帰還が嬉しいのか!」
『笑って』
「はっはっは!」
「○○たん、これ?」
『違う、これじゃない』
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120409
えへえへ