いぬぼく | ナノ





「名前たーん、起ーきてー!」


朝っぱらからうるさい輩に睡眠を妨害された私は、とにかく寝起きの機嫌が悪かった。


─ガチャ

『……………しね』

「この子、開口一番に死ねって言ったんだけど」

「名前さまの低血圧っぷりはお変わりありませんね」

『………用件』

「今日はあの子らの学校で文化祭があるんだ〜!一緒に行こう♪」

『……蜻蛉は?』

「ラウンジでお待ちですよ」


文化祭かぁ…楽しそう。20分待って、と彼らに告げて部屋に戻る。ソファに座って目を閉じた。人に起こされた時の不快感というか不愉快さを解消するのです。目を閉じて黙っているだけで気分は落ち着く。


『…準備しよ』


身支度を済ませてラウンジに向かう。


「遅いぞ、肉便器よ!」

『ごめんなさい』

「す、素直な名前も良いな…」

『4人だけ?野ばらちゃんは?』

「先に学校に行ったよー」


ということでやって来ました文化祭!手作り感溢れる校内装飾!もれなく全員が盛り上がってる生徒達!うわー、若い頃を思い出すなぁ。


『しかし、私達の姿って異色だよね』

「一人は仮面に残り三人はスーツ着込んじゃってるからねー♪」

『どこのSPよ』

「おや、あの姿は」


別にスーツじゃなくても良かったかなぁ。双熾の視線を辿ると、そこには金髪を三つ編みにした女の子がいた。女の子?いや、あれは…!


「女装キター!☆」

「ぎゃー!!!!!」

『わ、わた、渡狸くん…それは流行りの男の娘ではないですか!』

「その姿で客引きか?Mすぎるな!」

『快いぞ快いぞー!男の娘いい!とても可愛い!!』

「折角ドMが痴態を晒しているのだ。これは動画に収めてやらんとな!」

「だよねー☆」

「可愛いらしいですよ、渡狸さん」


女装した渡狸卍子。残夏に拘束される彼…いや、彼女が私に視線で助けを求めてくる。昔はよくこいつらにいいようにされる豆狸を助けていたけど、今は無理みたい。


『男の娘凌辱っていうタイトルで…』

「ぎゃあああ!」


校内に渡狸の断末魔が響き渡ったそうな…。後に、そのムービーを木綿に送ってあげた。好きそうだから。


『君らのクラスの出し物は逆野球拳…ってなに?』

「双熾を見てみろ!楽しそうだぞ!」

『……本当だ』


どうやら、じゃんけんで負けた方が服を脱ぐのではなく、逆に指定された衣装に着替えるという…なるほど、だから逆野球拳ね。双熾が凛々蝶ちゃん相手に楽しんでる。お幸せに。野ばらちゃんも女子生徒相手に色んな意味で楽しんでる。お手柔らかに。


「名前、私達もやるぞ!」

『え?私と蜻蛉がやるの?』

「あぁ、そうだ!」

『私になんのメリットもない…別に良いけどさ』

「最初はグー」

『私はチョキを出す』

「じゃ、……!」

『じゃんけんぽん』


蜻蛉はパー、私はチョキ。はなっから私が負けて着替えるだなんてベタなルートは用意されてないのよ。


『だから言ったのにね〜』

「そのSっぷり!快いぞ快いぞー!」

『じゃあ、はいコレ』

「え」


え、じゃなくてね。これは逆野球拳なんだから、負けた方が着替えるのよ。おわかり?そう言えば、彼は案外素直に差し出された衣装を受け取って更衣室に入っていった。


「どうだ!」

『ふ、ふはっ』


さすが蜻蛉とでも言うべきか。私が彼に手渡したのは無難にメイド服。ノリノリで着てくれた彼に感服である。


『蜻蛉蜻蛉、こうやって髪の毛を三つ編みにした方が…』


先程の卍子と同じように蜻蛉の長い髪を三つ編みにする。出てきた時の衝撃は和らいできて、見慣れてくると可愛いとさえ思えてきた。


『なんか可愛いかもしんない』

「褒めているのか!」

『まぁ…。そうだ、ご主人様って言ってみてよ』

「……ご」

『ほら、言えるでしょ?』

「ご、ご主人様」

『うん、可愛いわ』

「蜻たんと○○たんは何のプレイをしてるの?」

「主従プレイだ!たまには人に従うのも悪くない!」

「蜻たんが楽しそうで何より」


文化祭、楽しかったです。




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120404
原作ともアニメとも違った時間軸でお送りしております。


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