「スイッチ、頼まれてたやつ」
〈ありがとう〉
放課後、部室でボッスンがスイッチに紙袋を手渡していた。好奇心旺盛な私としては、袋の中身が気になってしまうのである。
『なにそれ?』
「な、なんでもないぜ」
『気になる』
〈なんてことはない物だ〉
『あ、もしかしてエーブ〈違う!〉』
〈断じて違う!〉
そんな必死に否定しなくても、思春期男子なんだからそれくらい…。そっち路線では無いの?
『余計気になる』
〈名前は気にするな〉
『気になるもん。良いじゃん良いじゃん、えろいものじゃないんでしょ?』
〈え、えろいとか言うんじゃありません!〉
『だってさぁ』
ここまできたら、意地でも見なきゃ気がすまないのが我が心情である。
「スイッチ、良いじゃねぇか」
〈…ボッスン〉
「俺の技術力の高さを確認する良い機会かもしれねぇ」
『よーし』
隙を突き、スイッチから紙袋を奪う。
〈\(^o^)/〉
『どれどれー…フィギュア?』
どうやら、普通のフィギュアらしいそれを袋から取り出した。…前言撤回。普通じゃないフィギュアだった。
『ボッスンの手先の器用さについては充分理解した』
「おう!」
『…スイッチ、なにこれ』
〈1/8スケール名前ちゃんフィギュアだ。流石ボッスン、完成度が高いな〉
「だろ!下半身が上手くいったんだ」
〈そうだな、確かに腰から足にかけてのラインが凄く良い〉
『勝手にフィギュアトークを始めないでもらえる?なに、スイッチは何がしたいの?』
取り出したフィギュアはどこからどうみても私だった。ボッスン凄いな。じゃなくて。私は気付かぬうちにフィギュアデビューしてたの?
〈部屋に飾るんだ〉
『うわぁ』
〈名前ちゃんかわうぃっす〉
『それは喜んだ方がいいの?』
コイツ開き直ったな。スイッチは自分の机の引き出しから、なにかを取り出した。もう嫌な予感しかしない。
〈1/12スケール名前ちゃんデフォルメフィギュアは製作済みだ〉
『やっぱり名前ちゃんか!!!!』
デフォルメて!ちょっと可愛い!!
〈可愛いだろう〉
『不覚にも……じゃなくて!どうするの!?私のフィギュアを!』
〈そりゃあ、〉
『やめて!聞きたくない!』
〈そうか〉
『一応聞くけど…私のフィギュアって、その2つだけ?』
〈あぁ。小田倉君が何とでも交換するから譲ってくれと土下座してきたがキッパリ断った〉
『あ…そうなの』
〈俺としてはどんな形であれ、名前を常に視界に入れておきたいんだ〉
『スイッチ…本物が隣にいる時くらい私だけを見てよ』
〈名前…〉
『とでも言うと思ったか』
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120318