ある日の帰り道、いつもの河川敷に見知らぬ女の子がいた。
いつものように河川敷で読者でもしようと立ち寄ったが、そこには珍しく先客がいたのだ。その先客というのは女の子で、小説片手に膝を立てて横になって…え、寝てる?
「………」
足音をたてないように、近くにしゃがんでみても反応しない。どうやら本当に眠っているようだった。少し驚きながらも、彼女の顔に目をやると予想外に端正な顔立ちをしているではないか。レンズを通して見えるまつ毛はとても長い。大人しそうな雰囲気が伺える。良い意味で文学…文系少女だ。
「……って」
いやいや、なにしてんだ俺は。なんで河川敷で眠っている女子をまじまじと見つめているんだ。さっさと帰ろう。
立ち上がったはいいが、なぜか彼女が視界から離れない。季節は季節だが、まだ日が沈んでくると肌寒くなる。その日の俺は、名前も知らない彼女に自分のブレザーを掛けて立ち去ったのだった。
「ヒデノリ、ブレザーは?」
「忘れた」
「ふーん」
大して興味も無さそうな反応を示す友人に別れを告げて放課後の教室を後にした。
『あ、君!』
校門に立っていたらしいセーラー服の女子。手には見覚えのあるブレザーがあった。
「は?」
『これ、私に貸してくれたでしょ?』
「も、もしかして」
目の前の彼女は八重歯を見せながら笑った。
「昨日の文系少女!」
『…文系少女って』
「あっ、いや」
『もしかして私のこと?』
あははと笑うその少女は、私は理系なんだけどねと冗談っぽく言った。そういえば眼鏡を掛けていない。だから最初は気が付かなかったのだろうか。眼鏡だけでこんなに印象は変わるんだな。
『はい、ブレザー。昨日はありがとうございました!』
「お、おう」
『じゃあね、ヒデノリ君』
文系で大人しそうに見えた少女は、実は理系で活発な子だった。
「……ギャップ萌えかよ」
それが、俺と彼女の出会いだ。
「なんで名前知ってんだ」
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120423
120513
連載にしようと思ったんですが、方向性が固まらなかったので短編で。
掴み所のない女の子。
文学少女とはお友達という裏設定。