『こんにちはー!』
「名前やん!」
04
放課後、私はスケット団の部室にやってきた。
『あれ、スイッチは?』
「スイッチならモモカと出掛け…あ」
「……ボッスン」
『…モモカ?』
聞き慣れない人名だ。ということは他校かな。名前からして女の子だろう。
「あ、えーとだな、」
「モモカは今売り出し中の若手声優でな、役作りに戸惑ってるらしくてアニメに詳しいスイッチに…」
『相談してるんだ』
彼もオタクだもんね。
私の周りにはオタクが多いな。
『じゃあ私は』
「せや、スイッチが待っててくれって言って…たんやけど」
『……勝手』
「「…………」」
『じゃあ私は暇潰ししてるね、お邪魔しました!』
そうして部室を出た私は階段を上がった。他の部活でも見学していよう。
「…まずいんちゃうん」
「……余計なこと言ったかもな」
「せ、せやけど」
「…俺らは真実を言ったまでだしな」
とりあえず、行く宛ても無かったので我らが小田倉のアニメ研究部に来ていた。黙ってスケット団の二人とトランプしていても良かったなぁ。
『小田倉、暇!』
「苗字君じゃないか」
『なんか話してー』
小田倉部長は嫌な顔ひとつせず、オススメのアニメについて語ってくれた。30分以上聞いていても飽きない、むしろ興味が湧いてきた。流石である。
『ありがとう小田倉部長』
「お気に召してくれたら嬉しいよ」
『気に入ったよ、DVD貸して欲しい』
〈それなら俺が貸そう〉
部室の入り口を見ると、スイッチが立っている。すると躊躇いなく部室に入ってきて、帰るぞと私の手を強引に掴んで廊下に出た。
『ちょっと、…痛いってば!』
〈あまり俺意外の男と一緒にいるな〉
彼のセリフがスケット団の部室を訪ねた時の私を思い出させる。
『………』
〈俺ばかりが、名前を好きみたいじゃないか〉
『…なにそれ』
依然として掴まれていたままの右手を、私は無理矢理離した。
『…人の気も知らないで!もういい、スイッチなんか嫌い!』
彼は唖然としていた。間違っていることは言ってない。それから私は昇降口まで走り、足早に帰宅した。
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120421
小田倉くんとお友達