『お母さん、おは…』
〈おはよう〉
02
いつも通り目を覚まし、いつも通り二階の自室からリビングに降りていくと見慣れない光景に驚かされた。
『な、なんでスイッチ?』
〈名前のお母さんならお父さんにお弁当を届けに行ったぞ〉
『そうじゃなくて』
〈パジャマ姿はレアだな〜〉
『……着替えてくる』
〈手伝『わなくていいからね!』
制服に着替えて、今は食卓でトーストを食べている。着替えのために部屋へ戻る私と、私に付いてこようとするスイッチの間に一悶着があったのは言うまでもない。
〈そろそろ時間だな〉
『うん』
結局、なぜスイッチが朝から我が家にいたのか訊かないまま家を出た。早く目覚めたから、そんなところだろうか。普段から二人で登下校することが習慣になっているから特に違和感もないんだけど。
「お、スイッチと名前じゃねぇか」
〈ボッスン〉
『おはよう、ボッスン』
「お前ら、学校で…その、ちゅーとか少し人目を気にしろよ」
〈考えておこう〉
『…………』
ボッスン君はそれだけを言って走っていってしまった。
『………だからまだ学校だよって言ったじゃない!』
〈気にしない気にしない〉
『気にするもん』
〈ちゅー〉
『うわっ、寄るな』
そこから学校までの軽い鬼ごっこが始まった。彼はストイックに見えるけれど、実は結構キス魔である。家にいた理由は放課後にでも訊こうと思う。
(名前がいなくなる夢を見たから、とは言えないな)
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120420