目が覚めた時には、既に違和感を感じていた。やけに早く目が覚めたからだ。おかしい、私がこんな時間にすっきりと目覚めるはずがない。
『………』
低い。なにがって、ベッドから降りた時の目線がやけに低い。内心、焦り始めた私は自分の掌を見て驚いた。
『小さい!!!』
え、え、嘘でしょう。窓ガラスに映った自分の顔に目を疑う。
幼い自分が、そこには映っていた。
『いやいや、冗談キツいぜ』
そんなことあり得ない。いや待て。少し冷静になるのよ名前。一般人ではあり得ないことでも、先祖返りとなると話は別になるのかもしれない。
現状整理をしようと思う。目が覚めると小学生低学年くらいの姿になっていた。以上。訳が分からない。今日が休日で良かった。
とりあえずこういう現象に詳しそうな残夏に相談してみようと、ダボダボになっているYシャツからセーターに着替えてエレベーターに乗り込んだ。
『しまった』
エレベーターはラウンジより上の階で停止し、扉を開けた。
『………』
「…………」
『……………』
「………名前か?」
『違いますよ』
一番会いたくなかった男に、真っ先に遭遇しました。瞬時に「閉」ボタンを押しても、彼はするりと閉まるドアの間を縫ってエレベーターに乗り込んできたのだ。
「随分と愛らしくなったものだな!」
『それはどういう意味よ、蜻蛉』
軽々と私を抱き上げて、彼は至極楽しそうに笑い声をあげた。
「高い高いだぞ!」
『高い!冗談抜きで高い高い!こ、怖いから!』
「では肩車だ、ふはは!」
『これは少し良いかもしれ…』
「どういう状況なの?」
残夏が私達二人を複雑そうな表情で見ていた。その表情はやめてほしい。どうやらエレベーターは既にラウンジに到着していたようだ。
蜻蛉の肩の上から、残夏に今に至るまでの経緯を説明した。
「どこかで気付かないうちに他の妖怪の妖気に当てられた、とか」
『戻る?』
「時間が経てばね〜」
残夏の言葉に、私は心底安心した。
良かった。
「良かったな、名前!」
『うん、良かった!』
「なんだかこう見てると」
兄妹みたいだね。
『…どこがよ』
「仲良しだし?」
「そうかそうか、兄妹に見えるか!名前はお兄ちゃんと呼ぶが『こんな、いつまでも卒業してくれない兄なんて嫌よ!』
「お兄ちゃんと、「クスクス、まぁ元に戻るまで仲良くするんだよ〜」
「おに『クスクスって口で言わないで頂戴、イラッとするわ』
「…………ぐすん」
『ごめんなさい、お兄ちゃん!』
それから夕暮れ時までマンションの敷地内で、お兄ちゃんとかけっこやら隠れんぼやらをしたのはまた別のお話。
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120510
耶菜様へ!
男体化or幼児化ということで、迷った末にこちらにさせて頂きました。
男体化の方は連載で書けたらいいなと思っています!
ギャグは気楽に書けるので、書いていてとても楽しいです(笑)
これからも当サイトを宜しくお願い致します!