坂田家 | ナノ





「ぎゃああああああ」
『うるさい』
「ぎぎぎぎぎぎんときは」
『仕事だよ。金兄も用事があるって。…八兄になにがあったの』


あいつら肝心な時にィ!!


「ごごごご」
『はい?午後?』
「ご、ごきちゃんがあああ」
『あぁ、ごきぶ「言うな」り』


俺が出来るだけ名前を怖がらせないようにファンシーに言ってやったのによ!この子はもう!


『八兄の部屋?』
「お、おう」
『八兄は虫とか本当に駄目だよね。銀兄は抵抗無いのに』
「だって怖い」
『だってじゃない』


名前は溜め息をひとつ溢し、手近の新聞紙を手に取り丸めた。え?どういうことよ。戦うの?か弱い名前ちゃんが?ごきちゃんと?まじで?


『まじで』
「はははやまるな!無理すんな!」
『あはは、別に無理してないって』
「まじでか」
『だから少し待ってて』
「…あらやだ男前!」


名前は可愛い顔して男前だな、オイ。パタパタとスリッパを鳴らしてリビングを出ていく名前の後ろ姿を唖然と見ていると、早くも数分後に彼女は戻ってきた。


『ミッションコンプリート』
「おおおお」
『もう安心してお仕事していいよ』
「お前さ、苦手なものとかないの」
『さぁ。それより、もうこんな時間だしお腹空かない?』
「…たまには外で食うか」


名前にあんなことさせて、更に昼飯まで作らせるのは心苦しい。久しぶりだし、なにより名前が嬉しそうだから良いか。


『ここのファミレス、この前に出来たばっかりなんだって』
「ふーん、てゆうかファミレスなんかで良いの?」
『三ツ星レストランにしとけばよかったの?ファミレスだとパフェもあるじゃんね』
「よし、入るか」
『このやろう…2人、禁煙席で』
「えっ」
『禁煙席でお願いします』


煙草…。


『そろそろ煙草止めたら?』
「それは無理かも」
『私はね、銀八さんの体のことを考えて言ってるのです。せめて本数を…』

「…メニューはお決まりですか?」

「『あ』」
「春休みに2人で何やってんだよ」
『へー、土方くんはここでバイトやってたんだね』
「なにって…デート?」
『(もうどうでもいいや)』
「あぁ?」
「ハンバーグセットで。名前は?」
『なんでもいい?えーと、オムライス!と、いちごパフェ2つ』
「なんでもいい?って聞いておきながら庶民的だな、お前は」


大串くんはウェイター姿で注文を確認して去っていった。なに不機嫌そうな顔してんだよ。ぶくく。


「大串くん、名前がうちに住んでること知らねぇのにな」
『あぁ、そうなんだっけ?八兄が生徒に手を出す淫行教師だと思われちゃったね!』
「おま、淫行教師って…面白がって弄ったけどそれはタチが悪い」









第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -