「別れてほしいの」

その時、世界が止まった気がした。

僕が大好きだったその人が僕の大好きだったその声で僕を否定する言葉を出す。一体何故?僕は先輩に何かした?いや、僕は先輩を大切に扱ってきた。先輩が大好きだった愛してた。今だって好きなのに、

「先輩、何でそんなこと言うんですか?何かの冗談ですか?今日はエイプリルフールじゃないですよ」
「冗談じゃないの!!」
「…先輩?」
「梓君、ごめんなさい」

先輩は泣いている。なのに僕よりも少し小さい彼女の頭を撫でることが出来ない。
何故先輩は僕を裏切るのだろう。何故僕から離れていくのだろう。僕を愛してはくれないのだろう。
その時、嫌な考えが浮かんだ。先輩が他のやつを好きになる?あり得ない。考えただけで吐き気がする。先輩は僕だけを見ていればいいんだ。そうすればたくさん愛してあげるのに。僕を裏切るなんてさせない。そんなこと絶対に許さない。

「泣いたって別れませんよ、先輩」

なんだか先輩まで憎くなってきた。冷たくいい放ってやったときの、驚いたような悲しそうな怯えたようなその表情にゾクゾクした。
そして先輩の首を掴んで後ろの壁に押し付ける。ここが人気の少ないところで良かったね、先輩。そう耳元で囁いてあげているのに、先輩は苦しそうにしている。あ、その顔素敵ですよ。

「先輩、別れるなんて言わないで下さい。そうじゃないと、僕、先輩のこと大嫌いになっちゃいます。憎くて憎くて殺しちゃいますよ。」






(そして僕は貴女に牙を向けた)




100224/燕樹

天野月子 鮫 より






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